入れ替わり百景03巻―他人の身体で迎える、次の朝。

鏡に映るのは、知らない顔。
けれど、出勤の時間は待ってくれない。
誰にも本当の自分を分かってもらえないまま、今日も他人の名前で呼ばれる――。

『入れ替わり百景03巻』は、男女の身体の入れ替わりを通して、自分の居場所や名前が少しずつ揺らいでいく姿を描いた、六つの物語を収録しています。

変わってしまった声。慣れない衣服。周囲から求められる振る舞い。
昨日まで当たり前だった日常が、ひとつずつ、自分のものではなくなっていく。

「似合っているよ」という褒め言葉さえ、本当の自分を遠ざけてしまう。借り物の身体で努力が認められても、その評価に刻まれるのは他人の名前。暮らしに慣れるほど、失った自分の輪郭が曖昧になっていきます。

収録作『骨格とファンデーション』では、男性の身体になった美咲が、服と化粧に自分をつなぎとめようとします。周囲に「女装」と映るその姿には、彼女にしか分からない切実な理由がありました。

ほかにも、借り物の声で生きる日々、入れ替わりによって変わる二人の関係、不実と復讐が絡み合う人生など、それぞれに異なる喪失を描いています。

他人として生きることに慣れたとき、自分はどこに残るのか。

身体の違和感や心理の変化をじっくり味わいたい方へ。
静かな怖さと、読み終えたあとにも残る切なさを、ぜひ本書で見届けてください。

『入れ替わり百景03巻』/古都 礼奈 著

2026年10月2日

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