初めて女装サロンへ行くとき、「どんな服を選べばよいのか」「何を持っていけばよいのか」「店員から変に思われないか」と、不安になる人もいると思います。
私も最初から迷わず店に入れたわけではありません。店の周囲を30分ほど歩き回り、ようやく意を決して入店しました。
この記事では、私が初めて女装サロンを利用したときの経験と、その後約8年間通って感じた変化について紹介します。
私が利用していたのは、現在は閉店している女装サロン「エリザベス」です。そのため、料金や利用方法は現在営業している店舗とは異なります。あくまで当時の私の体験談としてお読みください。
なぜ自宅女装ではなく、女装サロンを選んだのか
女性の服を着るだけなら、自宅でもできます。
しかし、当時の私はメイクをした経験がなく、化粧品の選び方も使い方も分かりませんでした。せっかく女装するなら、服を着るだけではなく、きちんとメイクをした自分も見てみたいと思ったのです。
女装について相談できる相手も、そう簡単には見つかりません。私は一人暮らしだったので、服を保管したり自宅で着たりすることはできましたが、家族と暮らしている人なら、衣装や化粧品を置いておくこと自体が難しい場合もあるでしょう。
服、ウィッグ、メイクをすべて自分で用意し、一人で試行錯誤するのは負担が大きい。必要なものを借りながら、経験のある人にメイクしてもらえることが、私にとって女装サロンを選ぶ理由になりました。
予約時には何を伝えればよいのか
私が通っていた当時のエリザベスは予約不要で、営業時間内に直接訪れる形式でした。そのため、私は事前に希望を伝えず、その場で相談しました。
現在の女装サロンは予約制の店も多く、利用方法は店舗によって異なります。予約する場合は、次のような内容を伝えておくとスムーズだと思います。
– 初めての利用であること
– 着てみたい服や、なりたい雰囲気
– 普段着ている男性服のサイズ
– 身長と靴のサイズ
– メイク、撮影、外出など、体験したい内容
特定の希望がなく、「とりあえず一度、女性の姿になってみたい」という程度でも問題ありません。私も最初は明確な完成像を持っていたわけではなく、スタッフと相談しながら決めました。
当日の持ち物は何が必要だったか
私の場合、初回に持っていったものは、ほぼ利用料金だけでした。
当時は入場券が必要でしたが、服、ウィッグ、メイク用品などは店内で借りられました。下着も持参できましたが、その場で購入することもできました。
店頭で購入すると割高になる可能性があるため、サイズが分かっているなら、自分専用の下着を用意していく方法もあります。一方、初めてでは自分に合うサイズが分からないこともあります。当時の店ではその場で測ってもらえたため、最初だけは任せる利点もありました。
現在のサロンを利用する場合は、衣装や下着を借りられるのか、何を持参する必要があるのかを、予約前に公式サイトなどで確認したほうがよいでしょう。
店の前まで来ても、すぐには入れなかった
女装サロンへ行くことを決めても、実際に扉を開けるのは別の問題でした。
私は初めて訪れたとき、店の周囲を30分ほど歩き回っています。場所は分かっているのに、店の前を通り過ぎては戻り、「本当に入って大丈夫だろうか」と迷い続けました。
女装したいと伝えることへの恥ずかしさもありましたし、店内がどのような場所なのか分からない不安もありました。
しかし、一度入ってしまえば、そこは女装したい人が利用するための店です。スタッフも、客が女装に興味を持っていることを前提に接してくれます。こちらが特別な説明や言い訳をする必要はありませんでした。
2回目からは、ほとんど迷わず店へ向かえるようになりました。最も高かったのは、最初に扉を開けるまでの心理的なハードルだったと思います。
衣装とウィッグはどう選んだか
店内には一般的な女性服もありましたが、私の印象では、コスプレ衣装に近い華やかな服も多く用意されていました。
最初から自分に似合う服を判断するのは難しいものです。写真を見て気に入った服でも、実際に着ると肩幅やウエストが合わないことがあります。サロンなら、その場で試着してサイズや見え方を確認できます。
私は別の記事で、最初に自分用のウィッグを買うなら、輪郭を隠しやすく手入れもしやすいセミロング程度が扱いやすいと書きました。ただし、サロンでレンタルする場合は、最初から実用性に絞る必要はありません。
ショート、ロング、普段なら選ばない色などを実際に試し、好きなものを選べばよいと思います。複数の髪型を比べられることも、サロンを利用する利点です。
初めて訪れたときは、メイド服やセーラー服など、普段着というよりコスプレに近い衣装を選びました。衣装は成人男性でも着られるサイズで、鞄などの小物も一緒に借りられました。
基本的には自分で着たい衣装を選びましたが、スタッフから「こんな衣装はどうですか」と勧められることもありました。最初はコスプレとして楽しんでいましたが、何度か通ううちに、自分で選んだ普通の女性服も着てみたいと思うようになりました。


初めてメイクされて感じたこと
それまでメイクをしたことがなかったため、顔に化粧品が重ねられていく感覚は新鮮でした。
私を担当したスタッフは陽気な人で、メイク中も積極的に話しかけてきました。こちらは緊張していて、何を話せばよいのか頭がまとまらない状態でしたが、会話を続けながら手際よく作業を進めてくれました。
スタッフも接客の仕事として女装希望者に対応しています。こちらが無礼な態度を取らない限り、女装したい理由を問い詰めたり、興味本位で変な質問をしたりすることは、少なくとも私の初回にはありませんでした。
「女装したいことを知られる」という不安は、入店前には大きく感じます。しかし、店内ではそれが利用目的として共有されています。隠す必要がなくなったことで、少しずつ気持ちも落ち着きました。
鏡の中で顔が変わっていくのを見た
メイクは鏡の前で行われたため、自分の顔が少しずつ変わっていく様子をリアルタイムで見ることができました。
特に印象が大きく変わったのは、目元のメイクが完成した頃です。アイシャドウやつけまつげなどで目元が整うと、メイク前とは顔全体の雰囲気が大きく変わりました。
さらにウィッグを被ると、鏡の中にいる人物が、それまでの自分とは別人のように見えました。
私は女装した写真を公開することがありますが、写真だけを見て、メイク前の顔まで正確に想像するのは難しいと思っています。それくらい、メイクとウィッグによる変化は大きなものでした。
もちろん、現在の画像認識技術などを使えば照合できる可能性はあります。それでも、人が普通に写真を見る範囲では、普段の顔をそのまま見せることとはかなり違うという安心感がありました。
初回は店内で撮影した
初回から女装した姿で外出したわけではありません。まずは店内で写真を撮りました。
見た目は大きく変わっていても、本人の緊張まで急に消えるわけではありません。顔はこわばり、自然なポーズも取れず、後から見るとかなり硬い写真になっています。
店のスタッフも声をかけ、緊張をほぐそうとしてくれました。それでも初回の私は、カメラを向けられただけで身体に力が入りました。
最初から自然な表情や女性らしいポーズを取れなくても、特に問題はありません。何度か撮影するうちに、顔の向きや手の置き方を少しずつ覚えていきました。
当時の料金と利用時間
私の記憶では、当時のエリザベスは1回4,000円ほどでした。ただし、かなり前のことで正確な金額は覚えておらず、私はチケットをまとめて購入して割引を利用していました。
利用時間は閉店する20時くらいまでで、早い時間に入れば、開店から閉店まで滞在できました。時間を気にせず衣装を選び、メイクや撮影を楽しめたため、現在振り返るとかなり利用しやすい仕組みだったと思います。
現在営業しているサロンでは、メイク、着替え、撮影、メイク落としまでを一つのコースとして、利用時間を設定しているところが多いようです。料金も店や内容によって大きく異なるため、ここで紹介した昔の金額は参考になりません。
予約前に、料金に何が含まれているのか、延長料金があるのか、撮影データを受け取れるのかなどを確認しておくことが重要です。
スタッフとの距離感
スタッフとの関係は、店や担当者、通った回数によって変わるため、一概には言えません。
私の場合は、何度も通ううちに距離が縮まり、プライベートでも会うようになったスタッフがいました。形式的な接客から、友人に近いフレンドリーな関係へ変わった人もいます。
ただし、距離が近くなることには、良い面だけでなく悪い面もあります。気軽に話せるようになる一方で、接客として保たれていた礼儀が薄れ、言葉や態度が雑になることもありました。
それでも初めて来店した客に対して、最初から極端に失礼な接客をする人は多くないと思います。まずは客とスタッフとして接し、相性を見ながら距離を決めれば十分です。
当時のエリザベスにおけるプライバシーと利用方法
初めて女装サロンへ行く人にとっては、本名や写真の扱い、ほかの利用者と顔を合わせるかどうかも気になると思います。
ここで紹介するのは、私が通っていた当時のエリザベスでの仕組みです。現在営業している女装サロンやイベントでは利用方法が異なるため、実際に利用する前に各店舗へ確認してください。
会員登録には本名が必要だった
エリザベスで会員になる場合は、登録のために本名を伝える必要がありました。
ただし、これは会員情報を管理するためのものであり、本名がほかの利用者へ共有されるわけではありません。店内では女装時の名前を使っている人も多く、利用者同士で本名を教え合う必要もありませんでした。親しくなった何人かには、私から本名を伝えたこともあります。
女装していることを周囲に知られたくない人にとって、本名の登録には抵抗があるかもしれません。私も最初は気になりましたが、少なくとも私が利用していた範囲では、運営上の登録情報として扱われていました。
ほかの利用者と顔を合わせることがあった
私が通っていたエリザベスでは、店内でほかの利用者と顔を合わせることがありました。
現在の女装サロンには、個室や貸し切りを中心にしている店舗もあるようですが、当時のエリザベスには利用者同士が同じ空間で過ごす場がありました。
初めは、知らない人に女装姿を見られることへ抵抗がありました。しかし、相手も同じように女装を楽しむために来ています。否定的に見られるより、衣装やメイクについて好意的に話せることのほうが多く、一般の場所で女装姿を見られるのとは感覚が違いました。
ほかの利用者と交流したい人には向いていましたが、誰にも会わずに体験したい人には落ち着かない環境だったかもしれません。
なぜ2回目以降も通うようになったのか
初めての女装は緊張しましたが、終わってみると楽しかったという感覚が残りました。そのため、2回目は最初に訪れてから約2週間後に行きました。
通い始めた頃は、おおむね隔週のペースでした。慣れてからは、毎週のように通っていた時期もあります。
最初は店の衣装をレンタルしていましたが、次第に自分が着たい服の方向性も分かってきました。コスプレ風の衣装だけでなく、普通の女性服にも興味が出てきたため、少しずつ自分で服や小物を買いそろえるようになりました。
その後は、自分で購入した服や靴、バッグを店へ持って行き、メイクや撮影のためにサロンを利用することも増えていきました。最初の頃のコスプレ衣装とは異なり、次第に普段着として自然に見える組み合わせを自分で考えるようになりました。

撮影データはCDや持参したUSBメモリーへ保存した
店内で撮影した写真はSDカードに一時保存され、CDへ移した後、SDカード内のデータを削除する方式でした。
ただ、毎回CDへ保存してもらうのは扱いにくかったため、私はUSBメモリーを持参し、そこへ写真データを入れてもらっていました。
撮影した写真を私の同意なく第三者へ渡された経験はありません。私自身が了承したうえで、スタッフや知人へ写真データを渡したことはあります。
現在はクラウドやスマートフォンでデータを受け取る店舗もあると思います。保存方法だけでなく、店側にデータが残るのか、いつ削除されるのかも確認しておくと安心です。
店側が写真を公開する場合も、本人の同意が前提だった
エリザベスでは、利用者の写真を店側が紹介に使用することもありました。
ただし、少なくとも私の経験では、本人に無断で写真を掲載されることはなく、公開する場合は事前の同意が前提でした。
一方、スタッフと親しくなってからは、「この写真を使わせてほしい」という交渉が、初めの頃より強引に感じられることもありました。
形式上は同意を求められていても、親しい相手から何度も頼まれると断りにくくなる場合があります。顔写真は一度公開されると完全に回収するのが難しいため、納得できない場合は、関係性にかかわらず断ったほうがよいと思います。
ちなみに、私は写真の公開をあまり気にしておらず、頼まれたときは了承していました。
これからサロンを利用する人は、公式サイト、SNS、広告、店内掲示など、どこまでの利用に同意するのかを確認しておくことをおすすめします。
衣装を保管できるレンタルロッカーがあった
エリザベスには、衣装や女装用品を保管するためのレンタルロッカーがありました。
私は利用していませんでしたが、家族と暮らしていて、自宅に女性服やウィッグを置けない人が利用していました。
女装用品は、服だけでなく、靴、ウィッグ、下着、化粧品なども必要になります。一式を自宅へ持ち帰れない人にとって、店内のロッカーは単なる荷物置き場ではなく、女装を続けるために必要な設備だったのだと思います。
女装したまま外出する場合には条件があった
エリザベスでは、基本的にメイクを落とし、男性の服へ着替えてから帰宅できました。女装した姿のまま帰らなければならないわけではありません。
女装したまま外出し、荷物を持ってそのまま退店する場合、退店後は店内に滞在できません。再び店内で過ごす場合は、改めて料金を支払う必要がありました。
男性服などの荷物を店に預けて外出し、あとで戻る場合は、預かり金として1万円が必要でした。20時までに店へ戻れば預かり金は返金されますが、時間を過ぎると返金されない仕組みでした。
これは当時のエリザベスにおける制度です。現在営業しているサロンでは、時間制のコースを設けている店もあります。利用前に、外出の可否、再入店の条件、荷物の預かり、メイクを落として帰れるかを確認したほうが安心です。
初心者が事前に確認したいこと
最初に確認しておきたいのは、料金と利用内容です。
– 予約が必要か
– 料金に衣装、ウィッグ、メイクが含まれるか
– 下着や靴を借りられるか
– 撮影が料金に含まれるか
– 写真データを受け取れるか
– 外出できるコースがあるか
– メイク落としと着替えの時間も利用時間に含まれるか
着たい衣装や撮りたい写真が決まっているなら、その希望をそのまま伝えればよいと思います。
一方、「女装に興味はあるけれど、具体的に何をしたいかまでは決まっていない」という人もいるでしょう。私も最初はその程度でした。経験のあるスタッフなら、服やウィッグを提案しながら進めてくれます。
完璧な計画を立ててから行く必要はありません。ただし、店ごとにサービス内容は違うため、料金と利用条件だけは事前に確認したほうが安心です。
女装サロンが向いている人
女装サロンは、メイクができない人、自宅に衣装を置けない人、購入前に複数の服を試したい人に向いていると思います。一方、自分でメイクや撮影ができるなら、必ずしも利用する必要はありません。
8年間通って変わった感覚
女装サロンへ通い始めてから約8年の間に、私の感覚は大きく変わりました。
最初にあった、女性の服を着ることへの強い羞恥心は、ほとんどなくなりました。初回は衣装へ着替えるだけでも意識していましたが、回数を重ねると、女性服も自分が身につけられる服の一つになっていきます。
サロンへ行くときは、女性服一式を持ち歩かなければなりません。荷物を少しでも軽くするため、ブラジャーやショーツを自宅から身につけて出かけることもありました。
夏は薄着になるため難しいのですが、上着を重ねられる季節なら、女性用下着を身につけたまま普通に街を歩いていました。
最初は窮屈に感じたショーツにも慣れ、ブラジャーも自然につけられるようになりました。現在では、男性服の下に女性用下着を身につけていても、それだけで特別な感情が生まれることはほとんどありません。
また、女性を見るときにも、顔や体形だけではなく、服の選び方や着こなしへ目が向くことが増えました。どのような服を組み合わせているのか、バッグや靴をどう合わせているのか。それまで意識していなかった部分を見るようになったのです。
初めて女装サロンへ行った日は、店の周囲を30分も歩き回っていました。それが8年後には、女性用下着を身につけて店へ向かうことも日常になっています。
女装サロンで得た最も大きなものは、きれいな写真だけではありませんでした。自分が恥ずかしいと思っていたことも、経験を重ねれば自然な行動へ変わっていく。その変化そのものが、私にとって最も印象に残った体験です。


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