25.初めてのネイルと帰り道のドキドキ
今日は特に特別なイベントもなく、サロンでのんびりと過ごすことにしていた。
女装することに慣れてきた悠人は、いつもの控えめなワンピースに軽いメイクという、代わり映えのないスタイルを選んでいた。
とはいえ、奈々さんや他の友人たちと談笑しながらお酒を楽しむこの時間は、日常の中でのささやかな楽しみでもある。
賑やかさと温かさがサロンに満ち、リラックスしながらお喋りする瞬間が、心地よい安らぎをもたらしていた。
「今日は落ち着いた感じだね。あんまり派手にしてないのも、たまにはいいかもね」と奈々さんが笑顔で話しかけてきた。
「うん、たまにはシンプルに過ごすのも悪くないよね。特に今日は、のんびりしたくて」と、悠人も柔らかく返す。
そんな平和なひとときが続く中、突然奈々さんが思いついたように声をあげた。「そうだ、最近サロンの友達がネイルアートにハマってるんだけど、悠人くんも試してみない?せっかくだし、実験台になってよ!」
悠人は驚きながらも、どこか興味を惹かれた。「ネイルアート?今までやったことないけど、ちょっと楽しそうだね。やってみてもいいかも。」
奈々さんは嬉しそうに笑いながら、他の友人を呼び寄せた。「ちょうどいい!アキちゃんが最近ネイルアートの練習をしてるんだよ。悠人くん、ちょっと手を貸してあげて!」
友人がニコニコしながらネイルセットを取り出し、悠人の手を取り始める。「じゃあ、さっそく始めるね!どんなデザインがいい?今回は少し派手めにしてみようかな。」
悠人は少し戸惑いながらも、「うん、お任せするよ。どんな風になるか楽しみだな」と期待を込めて答えた。
ネイルアートが進むにつれ、悠人はどんどん緊張していったが、友人が真剣に作業をしている様子を見て少し安心感も覚えた。
手元に塗られていく色とデザインが目に入ると、思わず「わあ、綺麗だね」と小さく呟いた。
「でしょ?完成まであと少しだから、楽しみにしててね!」と友人は笑顔で返事をしてくれた。
そしてついに完成したネイルアートが悠人の前に差し出された。「はい、完成!どう?」
悠人は自分の手をじっと見つめた。
普段は意識したこともなかった自分の爪先が、鮮やかなデザインで彩られているのを見て、驚きと興奮が入り混じった感情が湧き上がった。「すごい…こんな風になるんだ。ちょっと気分が変わるね。」
「やっぱりお洒落って大事だよ。細かいところにも気を使うと、全体的に違って見えるから」と奈々さんが微笑んで言った。
「でも、これでスマホとかちゃんと使えるのかな?」悠人はふと不安になり、試しにポケットからスマホを取り出してみた。
ところが、ネイルアートが思いのほか邪魔になって、スムーズに操作できないことに気がついた。「あれ…意外と不便だな。これ、慣れるまで大変そう。」
友人たちはその様子を見て笑いながら、「そうなの、ネイルやってると意外と不便なこと多いんだよ。でも、その分お洒落が楽しくなるんだから!」と教えてくれた。
「なるほど、確かに見た目はすごくいいんだけどね…やっぱりお洒落って大変だなあ。」悠人は苦笑いしながら答えたが、爪を眺める自分にどこか満足感を感じていた。
その後もみんなでお酒を飲みながら楽しい時間は続いた。
談笑しながらお互いの近況を語り合い、笑い声が絶えなかった。
時間はあっという間に過ぎていき、気がつくと夜もかなり更けていた。
「そろそろ帰るか」と、悠人は酔いが回った頭を軽く振りながら席を立った。
「気をつけて帰ってね。また今度も一緒にお酒飲もう!」と奈々さんが手を振って見送ってくれた。
「うん、ありがとう!また来るね!」悠人は手を振り返しながら、サロンを後にした。
外に出ると、冷たい夜風が心地よく酔いを少し覚ましてくれた。
サロンを出る前に元の服に着替え、いつもの自分に戻っていたが、手元に光るネイルアートだけが女装時の余韻を残していた。
電車に乗り込むと、つり革に手を伸ばした瞬間、悠人ははっと気がついた。「あっ、ネイルしたままだ!」慌てて手を引っ込め、周りに気づかれないように手を隠した。
「やばい、これめっちゃ目立つじゃん…どうしよう。」
心の中で焦りながら、悠人はつり革に掴まることを諦め、手を使わずにバランスを取りながら駅に着くまで耐えることにした。
酔いも相まって、うまく立っていられず、足元が少しふらついた。
降りる駅が近づくにつれて、「どうにかしないと…」と悠人は思いつき、美咲にメッセージを送ることにした。「ネイルの落とし方ってどうするんだっけ?やばい、家までこれ持って帰れない…。」
数分後、スマホに美咲からの返信が届いた。「除光液使えばすぐ落ちるよ!コンビニで売ってるから、帰りに寄ってみなよ。」
「助かった…ありがとう!」悠人は胸を撫で下ろし、駅に着いたらすぐにコンビニに向かうことに決めた。
駅に到着すると、悠人は急いで近くのコンビニに駆け込み、除光液を手に取った。
帰宅する前にネイルを落とすため、店のトイレで急いで作業を始めた。
「ふぅ…やっと元通りだ。」爪が元の状態に戻ると、悠人は安心し、家路を急いだ。
ネイルアートがなくなった自分の手を見て、少しホッとしながらも、どこか少し物足りない気持ちが残っていた。
「お洒落って本当に奥が深いんだな…」悠人はネイルアートに挑戦した一日を振り返りながら、また次のサロンでの時間を楽しみに思い描いていた。
—
26.女装を楽しむ彼女と僕
美咲がまた家に遊びに来ていた。
いつも通り、悠人の部屋に入るなり、アニメ鑑賞会が始まる。
部屋の明かりを落とし、薄暗い照明の中、二人でお気に入りのアニメを見ながら、次々と話が弾む。
今日は特に新作のアニメの話題で盛り上がり、二人の笑い声が部屋に響いていた。
「悠人、ここのシーンめっちゃ面白いよね!前回も見たけど、やっぱり何度見ても笑える!」美咲はテレビ画面を指さしながら、無邪気に笑う。
「そうだね、何度も見る価値がある作品だよね。」悠人も笑いを抑えきれない。
彼女の楽しそうな様子を見ると、自然とこちらも気分が軽くなる。
美咲が家に来ると、悠人は自然と女装をすることになっていた。
最初は少し戸惑ったが、今ではそれが当たり前のように感じられていた。
美咲が悠人の女装を見てからかうのが楽しくなり、悠人自身もそのやりとりを心地よく感じ始めていたからだ。
二人の関係は、不思議な形で居心地の良さを保っていた。
「悠人、今日も似合ってるね。やっぱり女装が板についてきたじゃん。」美咲は彼の膝に軽く手を置き、微笑む。
「まあね、慣れたっていうか、君がこうやっていつもからかうから、自然とそうなっちゃったのかもね。」悠人は照れ笑いを浮かべながら、肩をすくめる。
「でも、悪くないでしょ?こういう自分を見つけるのも楽しいじゃん?」美咲はいたずらっぽく、さらに悠人に近づく。
美咲の無邪気な笑顔とその軽いボディタッチに、悠人は少し胸が高鳴るのを感じた。
最近、彼女がこうやって密着することが増えたような気がする。
それも自然に、まるで長年の恋人同士のように。
だが、悠人にとって美咲はあくまで友人だ。少なくとも、表面的には。
「それにしても、本当に悠人の部屋って居心地がいいよね。いつも長居しちゃう。」美咲はふと声のトーンを落とし、リラックスした様子でソファに体を預ける。
「まあ、君がいつでも遊びに来れる場所だからね。」悠人は頬を掻きながら答えた。
アニメを見終えた頃、夕食の時間になった。
簡単な料理を二人で作りながら、いつものように軽い冗談を交わす。
美咲が泊まるときは、料理も洗い物も二人で一緒にやるのが恒例だ。
悠人が手際よく食材を切り、美咲がそれを鍋に入れていく。
「ねえ、悠人。今日は何か特別なデザートとかある?」美咲が期待の目で見上げる。
「特別ってほどじゃないけど、アイスクリームならあるよ。食べる?」悠人は冷蔵庫を指さしながら答える。
「やった!あとで食べるね!」美咲は笑顔で答え、料理を仕上げていく。
夕食を終え、満足感に包まれた二人はソファで一息つく。
アニメの話題から、最近の仕事の話にまで話は尽きない。
そんな中、泊まるつもりの美咲がそろそろシャワーを浴びようかというところで、突然思い出したように「あ、下着持ってくるの忘れた!」と声を上げた。
「え、下着忘れたの?またかよ…」悠人は苦笑いしながら、前回も同じことを言われたのを思い出していた。
「だって、悠人の家に泊まることが多くなって、すっかり油断しちゃってさ。」美咲は少し恥ずかしそうにしながらも、どこか楽しげだ。
「じゃあ、今回もまた貸すしかないか…」悠人は仕方なく、自分の引き出しから女性用の下着を取り出した。
なぜか家に揃っているそれらのアイテムに、再び彼は複雑な気持ちになりつつも、何も言わずに美咲に渡す。
「ありがとう、悠人!」美咲は嬉しそうに手を伸ばし、そのまま浴室に消えていった。
シャワーの音が聞こえ始め、悠人はリビングでぼんやりとテレビを見ながら、今日のことを思い返していた。
美咲との距離がどんどん縮まっているように感じるが、それが彼の中でどういう意味を持つのか、まだ整理がついていない。
ただ、彼女の存在が特別であることは間違いない。
美咲がシャワーを浴びるためにバスルームに入ると、すぐに「あ、悠人!」と声が響いた。
何事かと悠人が駆け寄ると、美咲がバスルームの扉を少しだけ開けて、顔を覗かせた。
「ごめん、クレンジング持ってくるの忘れちゃった。借りてもいい?」
「え、クレンジング?持ってるけど…って、なんで俺が持ってるのか不思議に思わない?」
「だって、悠人ん家には色々揃ってるじゃん。女装するならクレンジングだって必要でしょ?」美咲は悪びれもせずに笑う。
「まあ、そうだけど…。はい、どうぞ。」悠人はバスルームの中にクレンジングを渡し、呆れたように微笑んだ。
「ありがとう!助かるー!」美咲は満足そうに扉を閉め、シャワーを続けた。
悠人はソファに戻り、少し考え込んだ。
確かに、ここ最近、美咲が家に来るたびに、女装のアイテムや化粧品が自然と増えていった。
もともと趣味で集めていたものもあったが、美咲の影響で一段と充実していることに気づかされた。
シャワーの音が止んだ頃、またバスルームから声がかかった。「ねえ、悠人。またお願いがあるんだけど…」
「今度は何?」悠人は軽くため息をつきながら、バスルームに向かう。
「ネイルの除光液も忘れちゃったんだけど、貸してくれる?」
「またかよ…。まったく、もう少し計画的に準備してくれよ。」悠人は苦笑しながら除光液を手渡した。
「ありがとう!やっぱり悠人って頼りになるね。」美咲は嬉しそうに受け取り、再びバスルームの扉を閉めた。
「次は何だろうな…」悠人は冗談半分で呟きながら、再びソファに座り直した。しかし、その予感は的中することになる。
シャワーを終えた美咲が出てくると、今度はバスローブ姿で悠人に近づいてきた。「あのさ、悪いんだけど…化粧水も忘れちゃってさ、借りてもいいかな?」
「もう、次からちゃんと持ってきなよ。これで全部忘れたんじゃないよね?」悠人は笑いをこらえながら、化粧水を差し出した。
「うん、これで最後。ありがと!」美咲は満面の笑みを浮かべ、悠人の言葉に感謝しながら化粧水を手に取った。
数分後、シャワーを終えた美咲がバスタオルを巻いた姿でリビングに戻ってきた。
「パジャマも忘れちゃった…また借りてもいい?」美咲は照れくさそうに頭を掻きながら、悠人にお願いする。
「もう、ほんとに全部忘れてるじゃん…。まあ、いいけど。」悠人はため息をつきながら、クローゼットの奥から女性用のパジャマを取り出した。
やっぱりこれも、なぜか自分の部屋にある。
「ありがとー!悠人、本当に助かるわ。」美咲は笑顔でパジャマを受け取り、バスタオルを素早く交換して、すっかりくつろいだ様子だ。
「それにしても、悠人の部屋って何でも揃ってるよね。下着もパジャマも。まるで女性が住んでるみたい!」美咲は冗談半分に言いながら、ソファに腰を下ろす。
「いや、違うから。ただ、君が来るたびに忘れ物するから、それに備えてるだけだよ。」悠人は照れ隠しにそう答えるが、内心では確かに女性らしい物が増えていくことに少し不安を感じていた。
「ふふ、そうなんだ。じゃあ、これからも安心して泊まりに来れるね!」美咲は笑いながら、悠人の横にすっかり落ち着いて座る。
「ま、まあな…。でも、次回はちゃんと持ってきてよ?」悠人は少し笑いながら応じるが、彼女とのこの関係が続くことをどこか期待している自分に気づいていた。
その夜も、二人は他愛ない会話をしながら笑い合い、自然と夜が更けていった。
悠人はふと、自分の部屋がまるで美咲専用の化粧室のようになっていることに気づき、少し不思議な感覚に襲われた。
ここが自分の部屋であるにもかかわらず、女性の必需品が揃い、美咲が自然と使っている。だが、それが妙に心地よくもあった。
「これだけ揃ってると、私の部屋より便利かも。悠人の家って、もしかして女性向けにカスタマイズされてるんじゃない?」美咲がからかうように言うと、悠人は思わず笑ってしまった。
「そうかもね。でも、次回からはちゃんと自分の物を持ってきてくれよ。」
「うん、シャンプーとコンディショナーだけは、次回持ってくるね!さすがに髪のケアだけは、自分の物が合うからね。」美咲は笑いながらそう言った。
悠人は彼女の言葉に少しホッとしつつも、何となくこの状況が続いてもいいような気がしていた。
彼女が忘れ物をして、それを自分が補うという不思議なルーチンが、二人の距離感を微妙に近づけていることに気づいていたからだ。
「でも、他のものは全部貸してくれるから、ほとんど持ってこなくても平気だよね?」美咲はいたずらっぽく微笑んで、悠人の隣に腰を下ろした。
「まぁ…そうだけどさ。それでも、ちゃんと持ってきてくれた方が、俺も気を使わなくて済むし。」悠人は照れ隠しに、軽く肩をすくめる。
「いいじゃん、私と悠人はそういう間柄なんだから。」美咲は悠人の肩に頭を預けるように寄りかかり、さらに密着してきた。
悠人の心臓が早くなる。これまでも何度かこうした密着はあったが、今日は特に距離が近い気がする。
彼女の髪から漂うシャンプーの香り、肌の温もり、そして何よりも彼女の無邪気な笑顔が、彼の心を掻き乱す。
「…そういう間柄、って何だよ。」悠人は視線を逸らし、軽く笑いながらも、その言葉の意味に戸惑っていた。
美咲にとって、彼との関係はどんなものなのか。友人以上、でも恋人未満。それとも、ただの気の置けない仲間なのだろうか。
「ほら、気にしないで。私たち、いいコンビでしょ?」美咲はそう言いながら、悠人の頬に軽く触れる。
彼女の手が悠人の肌に触れるたびに、悠人の心拍数が上がるのを感じた。
「まぁ、確かに…俺たち、いいコンビだよな。」悠人はぎこちなく笑いながら応じるが、内心ではこの感情が何なのか、答えを出せずにいた。
二人はそのまましばらく無言で過ごしていたが、やがて美咲がふと立ち上がり、軽く伸びをした。「さて、そろそろ寝ようかな。今日も泊めてもらうから、ありがとね。」
「いいよ、気にしないで。いつでも歓迎だし。」悠人はそう言いながら、美咲に寝具を準備してあげた。
いつものように、彼女は悠人のベッドを使い、悠人はリビングで寝ることになっていた。
「おやすみ、悠人。今日は楽しかったよ。」美咲はベッドに潜り込み、毛布を抱きしめながら微笑んだ。
「おやすみ、美咲。」悠人もリビングのソファに腰を下ろし、目を閉じた。
だが、寝ようとしても頭の中では美咲とのやり取りがぐるぐると回り続けていた。
彼女が自分にどれだけ近づいてきても、彼自身は一線を越えることができない。
彼女が自分にとってどれだけ大切な存在であっても、彼はその感情を言葉にすることができなかった。
「いつまで、こうしていられるんだろう…」悠人はぼんやりと天井を見上げながら、そんなことを考えた。
美咲とのこの曖昧な関係は、楽しいが故に終わりが見えない。
そして、もしその終わりが来たとき、彼はどうするべきなのか。
美咲は悠人にとって特別な存在であることは間違いない。
だが、その特別さが、どのような形で彼の中に根付いているのかは、彼自身もまだ分かっていない。
そんな考えが渦巻く中、悠人は徐々に意識が遠のいていき、静かな夜が二人を包み込んだ。
翌朝、リビングで目を覚ますと、美咲がキッチンで朝食の準備をしていた。
「おはよう、悠人!ちょっと簡単に朝ご飯作ってるけど、食べる?」
「ああ、おはよう。ありがと。助かるよ。」悠人はまだぼんやりとした頭を掻きながら、キッチンに向かう。
美咲はいつものように明るく振る舞い、昨夜のことは何事もなかったかのように振る舞っている。
悠人もまた、その空気に安心感を覚えながら、彼女との何気ない日常を楽しんでいた。
「ねえ、悠人。次の週末もまた来てもいい?」美咲がふいに尋ねた。
「もちろん、いつでも来てよ。ここは君の家みたいなもんだから。」悠人は笑ってそう答えた。
美咲は嬉しそうに微笑んで、「じゃあ、決まりね。また一緒にアニメ見よう!」と、元気よく声を上げた。
こうして、二人の曖昧な関係は今日も続いていく。
お互いに心の中にある気持ちを隠しながらも、居心地の良い時間を共有している。
いつか、そんな関係に変化が訪れるかもしれないが、今はこのままでいい。
悠人はそう思いながら、美咲との朝のひとときを楽しんでいた。
—
27.ドキドキの告白、そして…
その日も女装サロンでの時間は楽しく、いつものように奈々さんや他の仲間たちと盛り上がっていた。
普段は穏やかな談笑がメインだが、今日は少し特別だった。
みんなが積極的にお酒をすすめてくれ、気づけば自分もそこそこ酔いが回っていた。
「ねぇ、悠人くんさぁ、最近美咲ちゃんとはどうなの?」
奈々さんがにやりとした表情で問いかけてくる。
「どうって…別に、いつも通りだよ。仲のいい友達って感じ。」
悠人は少し照れながら答えるが、心の中ではこの質問に少し動揺していた。
美咲と一緒に過ごす時間は楽しいけど、それが「友達」の枠を超えているのかどうか、自分でもまだはっきりとはわかっていなかった。
「うそだ~!あんなに仲良くしてるんだから、そろそろ付き合っちゃいなよ!」
別のサロン仲間が茶化すように言う。
「そうそう!私たち、悠人くんが告白するの待ってるんだから!」
「早く美咲ちゃんを幸せにしてあげなよ~!」
周りのからかいにも似た声が次々と上がり、悠人はだんだん居心地が悪くなってきた。
「いやいや、そんな急に…」悠人は笑いながら軽く流そうとするが、内心ではその言葉が心に突き刺さっていた。
彼自身も、美咲に対してただの友達以上の感情を抱いていることに気づいていたからだ。
だけど、どうやってその気持ちを伝えればいいのか、そのタイミングがつかめずにいた。
その日の夜は、二次会に誘われ、居酒屋でまたもやお酒が進んだ。
サロン仲間たちはまだまだ楽しそうだったが、悠人は自分の気持ちと周りの期待が交差する中で、少し気まずい気分になっていた。
翌日、悠人は思い切って美咲を食事に誘った。
普段なら気軽に誘える相手なのに、この時ばかりはなんだか緊張してしまう。
けれど、美咲は快く応じてくれ、二人はお気に入りの居酒屋で再び顔を合わせた。
「今日も楽しもうね!」美咲はいつも通り明るく、悠人の心を和ませてくれる。
お酒が入ると、少しずつ悠人も緊張がほぐれてきた。
笑顔で美咲と話しながら、徐々に心の中の不安も薄れていく。
「ねぇ、悠人、なんか最近元気ないよね?大丈夫?」美咲がふと真剣な表情で尋ねる。
「え?あ、いや…別に、そんなことないよ。」悠人は一瞬言葉に詰まりながらも、何とか平静を装う。
しかし、心の中では美咲への告白をどう切り出すかで頭がいっぱいだった。
楽しい時間があっという間に過ぎていき、ラストオーダーの時間が近づいてきた。
悠人はその瞬間が訪れるのを待っていた。
美咲に自分の気持ちを伝えるには、今が最適なタイミングだと感じていた。
会計を済ませ、二人で店を出たところで、ついに悠人は決心を固めた。
「美咲、ちょっと話があるんだけど…」悠人は緊張で手が汗ばんでいるのを感じながら、慎重に言葉を選んだ。
「うん、どうしたの?」美咲は首をかしげながら、少し心配そうに彼の顔を見つめている。
「実は、ずっと言おうと思ってたんだけど…美咲のこと、ただの友達じゃなくて、もっと大事に思ってる。だから…付き合ってほしい。」
悠人は一気に言葉を吐き出した。
心臓がドキドキと早鐘を打ち、顔が赤くなっているのが自分でも分かった。
一瞬の沈黙が訪れる。
しかし、それは悠人にとっては永遠に続くように感じられた。
「やっと言ってくれたね。」美咲は少し呆れたような、でも優しい笑顔を浮かべながら言った。
「え?」悠人は驚いて彼女の顔を見つめる。
「実は、ずっと待ってたんだよ。悠人がその気持ちをちゃんと伝えてくれるのを。でも、なんかのんびりしてるから、私の方から言おうかと思ったこともあったんだから。」美咲は笑いながら、悠人の腕を軽く叩いた。
「そ、そうだったんだ…。」悠人は少しほっとしつつも、まだ信じられない気持ちだった。
「だから、もちろんOKだよ。これからもよろしくね、悠人。」美咲は満面の笑みで答え、悠人の胸にじんわりとした温かさが広がった。
その後、美咲と別れた悠人は夢見心地で帰路についた。
心の中で何度も「付き合う」という言葉が反芻され、その度に胸が高鳴る。
だが、家に帰りついた途端、その高揚感が急激に現実感を帯び始め、パニックに近い感情が押し寄せた。
「本当に付き合うことになったんだ…どうしよう…これからどうすればいいんだ?」悠人は自分の部屋のソファに座り込み、頭を抱えるようにして考え込んだ。
美咲との関係が変わったことで、今後どう接していけばいいのか、突然不安が襲ってきた。
考えれば考えるほど頭が混乱し、冷静になるためにとお酒を飲み始めた。
だが、飲んでも飲んでも気持ちは収まらず、気がつけばボトルはほぼ空になっていた。
「もう…どうにでもなれ…」悠人はそう呟いて、ベッドに倒れ込んだ。
そして、そのまま意識を失うように眠りに落ちた。
次の日、目が覚めると猛烈な頭痛が襲ってきた。
昨日の飲みすぎが原因だ。
体調が優れないことを理由に、悠人はその日の仕事を休むことにした。
ベッドに横たわりながら、昨日の出来事をぼんやりと思い出す。
美咲との告白、そしてそれが成功したことに、再びじわじわと喜びが込み上げてきた。
「付き合うことになったんだよな…。これから、どうなるんだろう。」
悠人は頭を抱えながらも、心の中で少しずつ冷静さを取り戻していった。
美咲との新しい関係に戸惑いつつも、どこか楽しみな気持ちもあった。
そして、何よりも彼女の存在が、これまで以上に大切なものだと感じていた。
—
ネイルって綺麗に落とすのは手間です。
ほっとけばボロボロにはなるけどね。
外出時に落とし忘れてたら血の気が引きますねw
あと、知ってる人ならクレンジングオイルをさっと渡していいけど
知らない人なら多分訝しがられるから注意。
次回:明日の21:00更新し


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