狭いアパートの一室で、俺――タクマは、日常の疲れを癒すために今日も「変わったお香」を焚いていた。
あの香りにはリラックス効果があるとネットで見つけ、試してみたのだが、これがまた意外と効く。
気分が落ち着き、ストレスを忘れるため、毎晩のように焚いてベッドに横たわるのが最近の習慣になっていた。
「ふぅ……今日も疲れたなぁ……」
いつもと同じようにお香を焚いて、リラックスしていると、体が急にふわっと軽くなった。
目を開けてみると、なんと自分の体がベッドに横たわっているではないか。
驚いて辺りを見回すと、自分の視点が浮遊しているのに気づいた。
「え、幽体離脱!?こんなことが本当に……」
最初は混乱したが、すぐに好奇心が勝り、部屋を飛び出して隣の部屋を覗き込んだ。
そこに住んでいるのは、少し年の離れたおばさん――ユキコだ。
あまり交流がなく、陰気な印象のある人だが、今はそんなことよりも、彼女の部屋の中が気になった。
「ん? 何だ……?」
驚くべきことに、隣の部屋でもお香の影響で、ユキコも幽体離脱していたのだ。
彼女も浮かんだまま、驚いた表情で自分の体を見下ろしていた。
これはチャンスだ、俺は何を考えるでもなく、ユキコの幽体を自分の体に押し込んでみた。
「い、いける……!」
ユキコを俺の体に入れ、俺はユキコの体に入り込んだ。
俺は勝ち誇ったように微笑み、早速ユキコの体を動かし始めた。
「ふぅ、思ったより軽いな……」
女性の体というのは、やはり違う感覚だ。
面白いほど自由に動けるのでそのまま自分の部屋に入っていった。
そして、気になっていたのは、クローゼットの奥に隠していたメイド服だ。
ずっと試してみたかったけれど、男の体では似合わないし……。
「今なら……」
俺はためらいもなく、そのメイド服を取り出し、ユキコの体に着せ始めた。
フリルのついたエプロン、リボン付きのヘアバンド、すべてが完璧に合っていた。
鏡を覗くと、そこには美しいメイドが映っている。
「これは……予想以上にいいぞ……」
満足げに微笑みながら、俺は鏡の前でポーズを決めてみた。
その瞬間、背後から不安そうな声が聞こえた。
「タ、タクマさん!?何をしているんですか!?」
振り返ると、そこには俺の体に入ったユキコが、驚いた表情で立っていた。
自分の体を指差して、言葉を失っている。
「どうだ? 似合ってるだろ?」
俺はユキコにメイド姿を見せつけるようにポーズを変えながら、得意げに言った。
だが、ユキコは目を大きく見開き、混乱し続けている。
「こ、こんなことして……元に戻して、早く!」
彼女は声を震わせながら俺に訴えかけたが、俺はまだこの状況を楽しみたい気持ちが強かった。
せっかく女性の体に入って、しかもメイド服まで着たんだ。
こんな機会は二度とないかもしれない。
「いやいや、まだ楽しませてくれよ。これからが本番だろ?」
「な、何を言ってるんですか!? 私はこんなの耐えられない!」
必死に訴えるユキコを無視して、俺はさらにメイド姿でいろいろなポーズを取って遊んでいた。
しかし、突然、体がふわっと軽くなった。またしても、体から幽体が抜け出してしまったのだ。
「ちょっ、またかよ!」
俺は焦って元の体に戻ろうとしたが、その瞬間、ユキコが素早く動き出し、自分の体に戻ろうとしていた。
「や、やめろ! 俺の体に戻るな!」
必死に抵抗するが、力はどんどん弱まっていき、ユキコはついに自分の体に戻ってしまった。
ユキコはメイド服を着たまま急いで自分の部屋まで逃げていった。
俺はどうにかして元の体に入り込もうとしたが、目に入ったのは部屋の隅にいた小さな虫。
「いや、まさか……!」
気づいた時には遅かった。俺の魂はその虫に入り込んでしまったのだ。
視界は小さく、体は思うように動かせない。
そして、そこにはもう、自分の体を取り戻す方法は残されていなかった。
「戻れない……こんな、こんな馬鹿な……」
幽体が抜けた俺の体はそのまま意識を失い、床に倒れ込んだ。
意識不明のまま動かなくなった体を見て、俺は絶望の淵に沈んでいった。
一方、ユキコは元に戻ったものの、完全に元の自分に戻ることはできなかった。
なぜなら、タクマの体にいた間の感覚がどうしても消えないからだ。
特に、メイド服を着た時の妙な満足感。それは彼女に新しい刺激を与え続けた。
最初は一人で楽しんでいただけだったが、次第にその欲求は抑えきれなくなり、ユキコは時折メイド服を着て外出するようになった。
そして、タクマの意識が戻ることは二度となかった。
幽体離脱してるときって、多分自分の体は無防備ですよね。
好き放題するのは勝手ですが、多分リスクは大きいのかなと。
別の案として悪霊に乗っ取られて成仏するってのも考えましたが
こっちの方が絶望的かな?と。
身体を取り替えるならちゃんとお互いの合意を取らないと危険ですね♪
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