放課後、陽の光が優しくカフェの窓から差し込み、穏やかな午後のひと時を提供していた。
男子高校生の翔太は、いつもの仲間たちとともにカフェで談笑していた。
大学受験や部活の話、気になるクラスメイトのことなど、くだらない話題で盛り上がりながら、彼らは笑い声を響かせていた。
ふと、翔太の視界に入ったのは、ロリータファッションに身を包んだ一人の女性だった。
純白のフリルがあしらわれたドレスに、カールのかかった髪。
まるで人形のような完璧な美しさに、一瞬彼の息が止まった。
「おい、あの人見てみろよ、すげぇ美人だぞ」と友人の一人が小声で言いながら、指を向けた。
「ほんとだ、まじで人形みたいだな…」翔太も同意する。
仲間内で「誰が声をかけるか」という冗談半分の話が持ち上がり、ついにじゃんけんで決まってしまったのは翔太だった。
心の中でため息をつきながらも、負けた以上やるしかない。
翔太は立ち上がり、意を決してそのロリータファッションの女性に歩み寄った。
「す、すみません…少しお話ししてもいいですか?」緊張から声が震える。女性はふっと微笑み、思いのほか優しい目で翔太を見つめた。
「もちろん。少し静かな場所でお話ししましょうか?」柔らかい声が響き、翔太の緊張は少しだけほぐれた。
「えっと、別の店にでも…?」
「ええ、個室のあるカフェを知っています。ついてきてください。」
翔太は不安よりも好奇心が勝り、その誘いを受け入れることにした。
振り返ると、仲間たちは遠巻きに見守り、こっそり後を追ってくるような雰囲気を醸し出していた。
しばらく歩いた後、翔太たちは一見普通のカフェにたどり着いた。
女性に案内されるまま、彼は個室へと通された。
ドアが閉まると外からの視線は完全に遮られ、二人だけの空間が広がる。
「ここなら、誰にも邪魔されないわね」女性は微笑んで言った。
翔太は少し緊張しながらも、彼女のその美しさに引き込まれるような気持ちを抑えきれなかった。
彼女は優雅に席につき、テーブルには二人分の飲み物が運ばれてきた。
「どうぞ、飲んで。話しやすくなるわよ」
「え、あ、ありがとうございます…」
女性に促されるまま、翔太はコップに手を伸ばし、少しだけ飲み物を口に含んだ。
優しい甘さが口の中に広がる。だが、その瞬間、突然激しい眠気が彼を襲った。
「……っ!」視界がぼやけ、身体の力が抜けていく。
隣を見ると、女性もまた瞼を重たそうに閉じかけていた。
何かがおかしい…そう思った時には、意識は完全に闇の中へと沈んでいった。
次に目を覚ました時、翔太は自分の身体に違和感を覚えた。
頭がふわふわとして、手足が自分のものではないかのような感覚。
彼はゆっくりと目を開け、辺りをを見渡した。
個室の中は変わらないが、何かが違っていた。
そして、鏡に映った自分の姿に目が釘付けになった。
「え…?」自分の口から出た声が、まるで違うものに感じた。
それは高く、女性の声だった。
目の前に映っていたのは、あのロリータファッションの女性。
その姿を見た瞬間、彼は全身に鳥肌が立つのを感じた。
混乱したまま、ゆっくりと手を挙げると、鏡の中の女性も同じように手を挙げた。
信じがたいことに、自分の意識が彼女の身体の中にいることに気づいたのだ。
「なんだ…これ…!」
パニックに陥りながら、翔太は自分の姿を探した。
テーブルの向こうには、自分の身体に横たわる誰かがいた。
翔太は駆け寄り、揺り起こした。
しかし、目を開けたのは彼の身体をした女性、先ほどまでロリータの姿をしていた「彼女」だった。
「ふふっ、若い体って本当にいいわね。久しぶりにこんなに動きやすい身体を手に入れたわ」彼の身体で、女性は不敵な笑みを浮かべた。
「お前…何をしたんだ!?」
「簡単よ。あなたに特別な飲み物を飲ませただけ。そのおかげで、私たちはこうして入れ替わったの。残念だけど、もう元には戻れないわよ。」
翔太は驚愕し、信じられない気持ちで一歩後ずさろうとしたが、思うように身体が動かない。
全身に鈍い痛みが走り、節々がきしむような感覚に襲われた。
「嘘だ…こんなこと…!」
声を震わせる翔太だったが、彼女は冷静なままだ。「あなたはまだ若いし、これからたくさんの可能性がある。だけど、私は年を取ってしまった…誰も私を見向きもしなくなったの。だから、若さを手に入れる必要があったのよ。」
その言葉に翔太は怒りと絶望を覚えながらも、ふと感じた身体の違和感に意識を向けた。
関節が痛み、思うように動かないのだ。
手を握ろうとするだけでも指の関節がギシギシと音を立てるように感じられ、まるで重りを引きずっているかのように全身がだるい。
「くそ…この身体、どうなってるんだ…?」自分の体に起こっている変化に戸惑いながら、翔太は震える手を見つめた。
手のひらはしわだらけで、血管が浮き出ている。
まるで何十年も使い込まれた身体のように、あちこちに痛みが走る。
「この身体…老いてる…?」
「ええ、もちろんよ。私はもう若くないわ。だからこそ、あなたの若さが必要だったの。」彼女は微笑んだが、その笑みは冷たいものだった。
翔太は言葉を失った。
彼女の目的は最初から自分の若い身体を奪うことだったのだ。
だが、それ以上に彼を苦しめたのは、今感じている身体の痛みと動きの鈍さだった。
まるで、老化した身体がすべての力を失っているかのようだ。
「戻してくれ…!」翔太は必死に懇願したが、彼女は淡々と首を振る。
「戻る方法なんてないわ。もう決まったことなの。あなたは今、私。そして私はあなた。新しい人生を楽しむしかないのよ。」
翔太の心に重い絶望が広がった。
自分の人生が終わったのだと悟る一方で、身体中の痛みがさらに彼を追い詰める。
歩こうとするたびに、膝が痛み、腰に鈍い痛みが走る。
こんな身体では、まともに動くことさえできない。
彼は立ち上がろうとするも、痛みが強くてすぐに膝が震え、座り込んでしまった。
まるで全身が錆びついたように、動くたびに痛みが増す。
「じゃあね、私はもう行くわ。あなたも新しい自分の人生を考えるといいわ」彼女はそう言い残し、翔太の身体で立ち上がった。
「待て、どこへ行くつもりだ…!」
「あなたの友人たちと合流して、元の生活を続けるだけよ。何も変わらないわ、私にとってはね。」
翔太はその言葉に恐怖を感じた。彼女は自分の人生を完全に奪うつもりだった。
学校、家族、友人、全てを…。
「ふざけるな…!俺の身体を返せ!」翔太は怒りに任せて彼女に掴みかかろうとした。
しかし、彼の身体は彼の意志に反して鈍く、手を伸ばすことさえ苦痛に感じた。
「もう遅いのよ。あなたは今、私。もう誰もあなたを翔太だなんて思わないわ。」
翔太はその言葉に震え、完全に打ちのめされた。
彼は崩れるように床に座り込み、頭を抱えた。全てが終わったのだ。
その後、翔太の身体を持つ彼女は、何事もなかったかのようにカフェを後にし、友人たちに笑顔で挨拶を交わした。
翔太は一人、彼女の老いた身体に閉じ込められたまま、カフェの個室に取り残された。
メイクが落ちた、鏡に映る自分の姿は、しわだらけの老いた女性だった。
身体の痛みと重さが現実を突きつけるようで、若さも未来も奪われてしまったことが痛感される。
「こんなの、嘘だろ…」声は震え、高い声が耳に届く。
途方に暮れながら、翔太は虚ろな目で自分の手を見つめた。
その手は、しわがれた熟女の手だった。翔太はもう、かつての自分ではない。
彼が失ったものは、決して戻らない。
翔太はその現実を噛みしめ、これからどう生きるべきかさえわからないまま、ただその場に立ち尽くしていた。
メイクってなかなか怖いです。
手足なんかはなかなか誤魔化せないですが
ばっちりメイクしてると、割と若作りは可能ですね。
私も、別の意味ですっぴんは晒せないです。。。
ネット上でも、きれいにメイクしてると男だと気付けない人もいますよね。
そのくらい見てくれが良ければ人生イージーモードだったんですが。。。
幸いというか、相方は割と早いうちにすっぴん見せてくれてました。
途中で面倒になったようで。。。
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