【最初に】
多分最近、このブログをものすごく読み込んでくれている方が
1人か2人かぐらいいるみたいですね♪
もちろんこちらから誰かなんて特定出来ませんのでご安心を。
ただ、PV増えてて嬉しい悲鳴を上げていますw
定期購読、一括読み、どちらも有難い方々ですので
改めて御礼申し上げます♪
コメントなんかあるとなお喜びますので、是非お気軽にどうぞ♪

高校二年の桜井悠人にとって、鏡に映る自分の姿は常に「少しズレている」存在だった。
「なんで俺、こんなにまつ毛長いんだろ」
昼休み、教室で一人、前髪を指で上げながらため息をつく。
肌は白く、骨格は華奢。
男としては頼りなく、かといって女として見られるのは心底嫌だった。
中性的な容姿が原因で、幼い頃からからかわれた経験が、悠人を内向的な性格に育てていた。
クラスの中心から離れた窓際で、彼は存在を消すように息を潜めていた。
外ではサッカー部の威勢のいい声が響いている。
彼らとは違う、自分の中に巣食う「違和感」。
それは、周囲の求める「男らしさ」を悠人が決して満たせないという、根深い焦燥感だった。
その違和感が、決定的な形で爆発したのは、文化祭の準備期間、クラスの演劇練習が佳境に入った日のことだ。
放課後、クラスで一番声の大きいリーダー格の田中が、深刻な顔で練習を中断させた。
「おい、みんな聞いてくれ!大変なことになった!」
ざわつく教室。
田中が叩きつけるように言った事実は、クラスのヒロイン役、清水さんがインフルエンザで全日程の参加が不可能になった、というものだった。
「マジかよ!もう本番まであと一週間だぞ?」
「代役なんて無理だよ。清水さん、あんなに練習してたのに」
クラスメイトが騒然とする中、悠人は自分の存在をさらに透明にしようと机に伏せた。
早くこの場が収まってくれ、と願うばかりだった。
そのとき、田中が鋭い目で教室を見回し、やがて悠人の窓際の席で立ち止まった。
「……いるじゃねえか。最高の代役が」
悠人は顔を上げなかった。
関係ない、きっと別の誰かだ、と現実逃避を試みる。
しかし、田中の足音は明確に彼の前で止まった。
「おい、桜井」
「……え、俺?」
悠人が顔を上げると、クラスの全員の視線が集中していた。
居心地の悪さで背中が冷える。
「お前しかいないだろ。ヒロイン役、お前がやれ」
「は……はあ!?無理だよ、俺、男だし!」
反射的に拒否した。しかし田中の理論は妙な説得力を持っていた。
「見ろよ、お前。女子より細いし、顔だって童顔で可愛い顔してる。衣装だって清水のサイズがそのまま入るだろう。それに、お前、台詞も完璧に覚えてるだろ?」
「それは、台本係だから……」
田中はぐいと悠人の腕を掴み、彼の細さを強調するように引き上げた。
「これだよ、これ!中性的な魅力ってやつだ!男のヒロイン、ウケるぞ!お願いだ、悠人。クラスの危機なんだ」
周囲からも「桜井ならいける!」「やってくれよ!」という無責任な声が上がり始める。
拒否権はないと悟った瞬間、悠人の心臓は重く沈んだ。
「……わかった。やります」
彼の小さな声は、教室の歓声にかき消された。
翌日、放課後の準備室。
メイク担当の女子数名に囲まれ、悠人はまな板の上の魚だった。
顔を触られるたびに全身が硬直する。
「うわ、まつ毛長っ!ビューラーいらないじゃん」
「肌もきれいすぎ。ファンデ薄くていいわ」
くすぐったいような、恥ずかしいような感覚が入り混じる。
自分のコンプレックスだった要素が、今、最高の褒め言葉として扱われている。
鏡の前に座らされ、長い時間、彼は息を詰めていた。
アイラインが引かれ、チークが入れられ、唇に赤い色が乗る。
自分の顔が、まるで別人の絵画のように塗り替えられていく。
そして、最後に黒のボブのウィッグが装着された。
「はい、完成!」
メイク係の一人が声を上げ、悠人は恐る恐る鏡を覗き込んだ。
そこにいたのは、彼がよく知る桜井悠人ではなかった。
茶色がかった大きな瞳。
ぷっくりとした唇。制服(ブレザーを羽織る予定だったが、セーラー服の方が映えるということで急遽用意された)の白い襟元から覗く、華奢な首筋。
「……誰、これ」
思わず口から洩れた言葉は、自分自身に向けられた驚きだった。
そこには、内向的で自信のない悠人とは全く違う、生命力に溢れた「女の子」がいた。
「どう?超可愛いじゃん、悠人!」
「名前、何にする?ヒロインだから、咲(さく)とかどう?」
クラスメイトの言葉が遠くで聞こえる中、悠人は鏡の中の「咲」から目が離せなかった。
この姿には、彼がずっとコンプレックスとして抱えていた「違和感」が、一つも存在しない。
これは、僕がずっと、なりたかった自分なのか?
生まれて初めて、自分の容姿を「美しい」と感じた。背中に電流が走るような感覚。
その瞬間、「桜井悠人」の中に、もう一つの人格——「桜井咲」が誕生したのだった。

もう一つの人格なんてのは言い過ぎかもですが
別の自分、新しい自分になるための一つの方法ではありますね。
まあこんなことは出来ませんけど。
このブログでしか私を知らない人にとって
社会人の俺はただのしがない中年サラリーマンなんで。
楽しいこともあれば、反面困ることも。
衣類やバッグとか、諸々費用が倍に、必要なスペースも倍に。。。
今年は電子書籍は打ち止めです。
年末暇な方は買ってください♪
ブログ更新はあと数回。
年末までこんな感じの文を書き続けます。


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