「無理だって、俺みたいな声じゃ……。」
雄太は拳を握りしめ、うつむいたまま呟いた。
体格も大柄で、低い声の彼にはアイドルの歌声を真似るなんて到底できる気がしなかった。
だが、心の中ではどうしても諦めきれない思いがあった。
アイドルグループ「ルミナスティア」のセンター、カノンの歌を一度でいいから完璧に歌ってみたい——そう願っていたのだ。
「ねぇ、そんなに悩むなら、私の身体で歌えば?」親友の美咲が、突然とんでもない提案をしてきた。
「は? 何言ってんだよ。」
「だから、入れ替わればいいのよ。私、ちょっと特殊な力持ってるんだ。信じられないかもしれないけど、試してみない?」
美咲はいたずらっぽく微笑んでいたが、その目にはどこか本気が宿っていた。
「冗談だろ……そんなこと、普通ありえないし。」
「じゃあ、試してみる? 無理なら諦めればいいだけだし、ね?」そう言いながら、美咲は手を差し出した。
数分後、雄太は目を開けた瞬間、全く違う感覚に包まれていることに気付いた。
鏡に映るのは、紛れもなく美咲の姿。
白いドット柄のトップスにチェック柄のスカート。
タイツ越しに足元の冷えを感じる。
「うそ……本当に入れ替わったのか?」耳に届く自分の声が高く、透き通っている。
驚きとともに、心の中には微かな興奮が生まれていた。
「ほら、せっかく私の身体になったんだから、思いっきり歌ってみなよ。」隣で自分の身体に入った美咲が笑いながら言う。
「で、でも……こんな格好で歌うのか?」雄太はスカートの裾を引っ張りながら、恥ずかしそうに言った。
「何言ってるの。私の身体なんだから、この服も私の一部でしょ? 気にしない、気にしない!」美咲の軽い口調に背中を押されるようにして、雄太は恐る恐るカラオケマイクを握った。
最初の1曲目、雄太は緊張で声が震えた。だが、美咲の身体が持つクリアな声質に次第に自信を持ち始める。
「すごい……これなら本当にカノンの声みたいだ!」
「そうでしょ? ほら、次は振り付けもやってみなよ。」美咲が提案すると、雄太は恥ずかしがりながらも手を動かし、ルミナスティアのダンスを真似し始めた。
鏡に映る自分の姿——いや、美咲の姿が、完璧なアイドルの動きを再現している。
雄太はスカートの揺れに最初こそ違和感を感じたが、次第にその感覚すら忘れ、夢中になった。
「じゃあ、私はちょっと出かけてくるね。」雄太がカラオケで歌い踊る姿を見届けた美咲は、彼の身体のまま街へと繰り出していった。
「ちょ、ちょっと待てよ! 俺の身体で何する気だよ!」
「大丈夫、大丈夫! 悪いことなんてしないから。信じてて。」美咲は軽く手を振ると、雄太の身体を借りてそのまま外へ消えていった。
身体を戻した後、雄太はある日、見知らぬ女性から連絡を受けた。
「先日はありがとう。また会いたい」と送られてきたメッセージに、雄太の心は凍りついた。
「美咲、お前、俺の身体で何やったんだ……!」問い詰める雄太に、美咲はケラケラと笑いながら答える。
「いやぁ、ちょっと楽しくなっちゃってさ。大丈夫、ちゃんとイメージ壊してないって!」
「壊してない!? お前……!」怒りで声を荒げる雄太。
しかし、美咲は軽く手を振り、深刻さを感じていない様子だった。
「まぁまぁ、あんたも歌で楽しんだでしょ? それでチャラってことで。」そう言い放つ美咲を見つめながら、雄太は二度と彼女に関わらないと心に誓うのだった。
女性の歌手の歌を歌うのに
声を変えたいと思う人はいそうですね。
男性でも喉仏を震えさせない発声が出来れば
女性っぽい声は出せるみたいです。
感覚的には地声のまま裏声をだす感じですかね?
私は出来ませんけど。。。
女性が、男性的な声を出す方法は知りません。
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