
「ん……あれ?」
悠人は、奇妙な重さと柔らかさを感じながら目を覚ました。
視界に入ってきたのは、華奢で細い、女性の指。自分の手をまじまじと見つめる。
「うそ……だろ……」
声を出そうとして、出てきたのは、自分のとは違う、落ち着いた大人の女性の声だった。
月見・彩音の身体。
反射的に顔を上げると、目の前には、自分の身体に入った彩音さんが、やはり同じように混乱した顔でこちらを見ている。
「あ……あなた……悠人くん……なの……?」
「彩音さん! 僕です! なんで、なんでこんなことに!?」
二人が混乱し、声を荒げていると、優希が冷静な顔で部屋に入ってきた。
「まあ、どうやら本当にやっちゃったみたいだね」
優希はため息をついた。
「優希! これ、どういうことなの!?」
彩音さんの身体に入った悠人が叫ぶ。
「知るかよ! 私の冗談が発端なのは悪いけどさ!」
優希は頭を掻いた。
「でも、とりあえず落ち着けって。そんなに大声出してご近所さんに聞かれたらどうすんだよ、お母さん」
「お、お母さんって……」
悠人は自分の手を見つめ、身体中がざわつくのを感じた。
これは、紛れもなく月見彩音の身体だ。
彩音さんの身体に入った悠人は、混乱と恐怖で震えた。
一方、悠人の身体に入った彩音さんは、自分の息子のような体格に戸惑いつつも、どこか諦めたような顔をしていた。
「……仕方ありませんね。悠人くん、落ち着きましょう。とりあえず、元に戻る方法が分かるまで、数日だけ様子を見ましょう」
悠人の身体で、彩音さんが落ち着いた声で提案した。
「え、数日も!? 無理ですよ! 僕、学校は!?」
優希は肩をすくめた。
「簡単じゃん。悠人は、私のお母さんとして生活する。急に体調が悪くなって学校を休む。お母さんは、悠人として学校に行く。どうせ、数日なら誰も気づかないって」
優希はとんでもないことを提案したが、その冷静な判断力に、混乱していた二人は従うしかなかった。
かくして、悠人(身体は彩音)の、主婦としての数日間の生活が幕を開けた。

最近文章がちょっと長いので
少し短めに、見せたい部分を中心にしてみました。
後日完全版で、前後は付け足すんですが。
このブログのものはあくまで体験版的なものなので。
もう少し読み応えがあった方が良ければ、もう少し長くします。
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