春のやわらかな日差しが降り注ぐ中、蓮(れん)は幼なじみの結衣(ゆい)と一緒に近所の神社に来ていた。
二人は幼い頃からの友達で、毎年桜が咲くこの季節に神社を訪れるのが恒例だった。
「蓮、見て見て!今年もこんなに綺麗に咲いてるよ!」結衣が小さな手を伸ばし、桜の花びらに触れようとする。
「うん、毎年見てるけど、やっぱりこの景色は何度見てもいいな」蓮も同じように桜を見上げ、淡いピンクの花びらに心が和む。
そんな中、ふと結衣が神社の境内にある大きな石に目を止めた。
石の表面には「心を入れ替える」と書かれた不思議な文字が刻まれている。
「ねえ蓮、この石って何だか不思議じゃない?」結衣が興味津々に石に触れようとする。
「心を入れ替える?何だそれ、伝説か何かか?」蓮は興味半分で石に触れてみた。
その瞬間、突然視界が暗転し、周りの音が遠のいていくような感覚に襲われた。
気がつくと、目の前には自分の顔が――いや、自分の体が立っていたのだ。
「えっ……結衣?」「……蓮?」
二人は信じられない思いで、お互いの姿を見つめ合う。
どうやら、本当に体が入れ替わってしまったらしい。
「え、ちょっと待って、私が……蓮の体に?」結衣(蓮の体)は自分の手を見下ろし、恐る恐る触れてみる。
「まさか……俺が結衣の体に?!」蓮(結衣の体)は自分の声が高くなっていることに驚き、目の前の自分の姿――いや、今は結衣が入っている体を見て動揺を隠せない。
「どうする?これ、元に戻れるのかな?」結衣(蓮の体)は不安げに問いかける。
「わからない。でも、落ち着け、まず冷静になろう」蓮(結衣の体)は冷静を装いながらも、心の中ではどうしたらいいのか分からずに混乱していた。
「とにかく、この神社の人に聞いてみる?」結衣(蓮の体)が提案するが、蓮(結衣の体)は首を振る。
「いや、こんなこと、普通の人に言っても信じてもらえないだろうし……。ひとまず、今日はこのまま家に帰ってみようか」
お互いに戸惑いながらも、二人はその場を後にすることにした。
その夜、蓮(結衣の体)は自分の部屋に戻り、普段の生活を続けようと試みる。
しかし、女性の体に変わったことで、小さな違和感が積み重なり、思わずため息をつく。
「こんなに違うものなのか……」
彼はまず服装からして違和感を感じた。
普段着ているラフなTシャツやジーンズと違い、結衣の部屋には可愛らしいワンピースやスカートばかりが並んでいる。
一方で、結衣(蓮の体)は自分の家に戻り、男の子の体で過ごすことに苦労していた。
男らしい姿勢や話し方をどうすればいいのか分からず、彼女は悩んでしまう。
「蓮、これ、結構大変じゃない……?」
結衣は自分の手で男の体を動かす不思議な感覚に戸惑いながらも、少しずつ慣れていくしかないと思い始めた。
翌日、二人はそれぞれの学校に行くことになった。
蓮(結衣の体)は女子高生の制服を着て学校に向かい、結衣の友人たちと過ごす時間に困惑しつつも新たな気づきを得ていた。
「ねえ結衣、最近なんか元気ないみたいだけど大丈夫?」友人の美咲(みさき)が心配そうに声をかけてくる。
「う、うん、大丈夫……」蓮(結衣の体)はぎこちなく答えるが、友人たちの優しさに少し心が温かくなる。
一方、結衣(蓮の体)は蓮の男友達と過ごす中で、男子ならではの会話や行動に驚かされる。
「蓮、お前いつもと違うな。何かあったのか?」蓮の友人である拓也(たくや)が不思議そうに問いかける。
「えっ?あ、いや、別に……」結衣(蓮の体)は必死にごまかしながらも、男の子同士の会話に戸惑いを感じつつ、少しずつ蓮の友人たちと打ち解けていく。
数日が経ち、二人はお互いの生活に少しずつ慣れていく。
しかし、蓮は結衣の体で過ごす中で、彼女が抱えていた悩みやプレッシャーに気づくようになっていた。
「結衣、普段こんなことを考えてたんだな……」彼はふと、結衣の机に置かれた日記を見つけ、そこに書かれていた彼女の悩みや不安を知ることになる。
友人や家族との関係、進路のこと、周りからの期待に押しつぶされそうになる気持ち――。
「俺はただ彼女が元気で明るい子だと思ってたけど、本当は色々と抱えてたんだな」
蓮は胸が締め付けられるような思いで日記を閉じ、彼女に対する見方が少しずつ変わっていくのを感じた。
一方で、結衣も蓮の体で過ごす中で、彼が自分に対して抱いていたさりげない気遣いや、友情以上の何かを感じ始めていた。
「蓮って、私のことこんなに考えてくれてたんだ……」彼女は蓮の部屋で見つけた写真や思い出の品を見つめながら、彼が自分を大切に思ってくれていることに気づき、胸が温かくなるのを感じていた。
数日後、二人は再び桜が舞い散る神社へと足を運んだ。元に戻るためにどうすればいいのかを考え、もう一度あの「心を入れ替える」石に触れてみることにした。
「結衣、今まで色々ごめんな。お前がそんなに悩んでたなんて知らなかった」蓮(結衣の体)は真剣な表情で結衣に語りかける。
「ううん、蓮が私のことをこんなに考えてくれてるって知って、私は嬉しかったよ」
結衣(蓮の体)も微笑みながら、蓮に向かってお礼を言った。
二人はそっと石に触れ、再び眩しい光に包まれた。
そして気がつくと、元の体に戻っていた。
「元に戻った……!」蓮は自分の体に戻ったことに喜びながらも、結衣に対する思いがさらに強まっていることに気づいた。
「これからもずっと、友達でいてくれる?」結衣が少し照れくさそうに尋ねる。
「当たり前だろ。お前は大事な友達だからな」蓮は照れ隠しに笑いながら、桜の花びらが舞う中で結衣と並んで歩き出した。
その後も二人は桜が舞う季節になると、毎年のように神社を訪れ、桜の下で再会を誓う。
入れ替わりを経験したことでお互いへの理解が深まり、かけがえのない絆が生まれたのだ。
桜の花びらが舞う中、二人は新たな一歩を踏み出していく。
なんかこういう話を作ろうとすると、神社がよく出てきますね。
昔々のその手のお話とか考えると使いやすいのかも?
不思議な力が働いたり、階段から落ちたり
近所にそんなのなかったな。。。
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