春の暖かな日差しが降り注ぐ放課後、桜並木の下を歩く男子高校生、橘蓮(たちばな れん)は、ふと一人の女子が木の下でスケッチブックに何かを描いているのに気づいた。
スケッチをしていたのは同じ学校の美術部員、朝霧美咲(あさぎり みさき)だった。
蓮は普段、美咲のような華やかな存在とは無縁の生活を送っていたため、彼女に話しかけるつもりなどなかったが、ふとした拍子に視線が交わってしまう。
「何見てるの?」
美咲が少し不機嫌そうに声をかける。
「べ、別に。ただ、そこ通りたかっただけだし。」
「じゃあ、どうぞ?」
美咲のそっけない態度に、蓮はなぜかムキになった。
「いや、そんな言い方しなくてもいいだろ!」
「そっちが変にジロジロ見るからでしょ?」
口論が始まったその瞬間、突然、強い風が桜の花びらを舞い上げた。
その風が二人を包み込んだかと思うと、世界がぐらりと揺れた。
「……えっ?」
蓮が目を開けると、自分の体ではない。
見覚えのない白い手、スカートの裾。
目の前には驚愕の表情を浮かべた「自分」が立っていた。
「……な、なにこれ!?」
二人は同時に叫んだ。
「ちょっと、これどうなってるの!? 私が……橘君の体に?」
美咲の言葉に、蓮も混乱しながら答える。
「俺だって分からないよ! お前が何か変なことしたんじゃないのか?」
「私が? なんでそうなるの!」
お互いに責任を押し付け合うも、状況は変わらない。
元に戻る方法を探ろうとするが、解決策が見つからず、結局その日はお互いのふりをして過ごすことに決めた。
翌日、蓮(美咲の体)は美術部の活動に参加しなければならなかった。
「おい、美咲、お前、昨日まであんなに熱心に描いてたのに、なんで今日は筆が止まってるんだ?」
美術部の先輩が不思議そうに尋ねるが、蓮はなんとかごまかした。
(どうすりゃいいんだよ……絵なんて描いたことないし!)
一方、美咲(蓮の体)は運動部のハードな練習に参加させられた。
「蓮! お前、最近どうしたんだ? 動きが鈍いぞ!」
部員たちの声に、美咲は心の中で叫ぶ。
(私は運動なんて苦手なの! 無理!)
こうして、お互いの生活の大変さを身をもって体験することになった。
数日が過ぎ、二人は桜の木の下で再び会話を交わす。
「美咲、お前、あんな先輩たちの下で毎日やってたのかよ。大変だな……」
蓮がしみじみと言うと、美咲も同調した。
「蓮君だって、あの厳しい練習をこなしてたんだね。すごいと思った。」
徐々に、二人はお互いの苦労を理解し始める。そして、次第に自分の抱えていた悩みを語り合うようになった。
「俺、何もできないやつだって思ってた。でも、お前の生活を体験してみて、少し自信が持てたよ。」
「私も、蓮君みたいに自由でいいなって思ってたけど、自由な中にもちゃんと努力してるんだって分かった。」
二人は、入れ替わりが起きた桜の木の下で、再び元に戻る方法を探ろうと決意する。
「たぶん、本音をさらけ出すのが大事なんじゃないかな。」
「本音?」
蓮が戸惑いながらも、美咲に自分の気持ちを打ち明ける。
「俺、お前のことが羨ましかったんだ。みんなに好かれて、完璧な人だって。でも、お前も悩みがあるんだなって知ったら、少しだけ近づけた気がする。」
美咲も蓮に微笑みながら答えた。
「私だって、蓮君が持ってる強さや真っ直ぐさが羨ましいって思ったよ。自分にはないものだから。」
その瞬間、再び風が吹き、桜の花びらが舞い上がった。
気がつけば、二人は元の体に戻っていた。
それからというもの、蓮と美咲はすれ違っても自然と笑顔を交わすようになった。
「ねえ、また絵のモデルになってくれない?」
「は? 俺が?」
「今度はちゃんと感謝するから。」
春の暖かな陽射しの中、二人の特別な物語が静かに幕を閉じるのだった。
文化系な女子とスポーツ男子が入れ替わる。
案外お互いの生活がハマり、自分の新たな才能に気づく。
なんて展開ではなく、普通に出来ない。
まあ、身体が覚えているとか言っても、頭が変わるとダメでしょうね。
世の中そんなに甘くないと。
そんな簡単に入れ替われる世の中ではないですが。。。
なんかイラスト関係ないな。
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