教室の隅で一人、机に突っ伏していた彼女の姿を見た瞬間、俺は思わずニヤリと笑った。
佐藤紗英――クラスメイトの地味な女子で、いつもおとなしくて目立たない存在。
そんな彼女をからかうのは俺にとって日常茶飯事だった。
「おい、佐藤。また一人で本読んでんのかよ?」と、俺はからかうように彼女の肩を軽く叩いた。
「や、やめてよ…」と、怯えるように顔を上げる佐藤。
いつもならここで引き下がるのだが、今日は気分が良かったので、もう少し遊んでやろうと決めた。
「どうせまた地味な本だろ?何読んでんのか見せろよ」と、俺は彼女の手から本を引き剥がすように奪い取ろうとした。
しかしその瞬間、佐藤の目が何か不穏な光を帯びたように見えた。
「本当に…やめてって言ってるでしょ?」彼女の声は低く、冷たかった。
次の瞬間、俺の視界が暗転し、意識が途切れた。
目を覚ました時、俺は教室の床に座り込んでいた。
体が異常に重く、動かそうとするが思うようにいかない。
周りを見渡すと、目に映るのは見慣れた教室の風景…のはずが、何かが違っていた。
俺は驚いて自分の手を見た。
小さく、華奢な手がそこにあった。
そして、視界に入ったスカート…「嘘だろ、なんで俺が…!?」
「気づいた?」聞き慣れない自分の声が耳に飛び込んでくる。
顔を上げると、そこには俺の身体が立っていた。
「お前…!?」驚愕する俺の表情を、俺になった佐藤がニヤリと笑いながら見下ろしていた。
「面白いね、これがどういうことか、もうわかってるでしょ?」彼女は俺の声で話していた。
「なんだよこれ!どうやって…!」俺はパニックに陥りながらも立ち上がろうとしたが、足が震え、まともに立つことすらできなかった。
紗英の身体は力が弱く、思うように動かない。
「そんなことはどうでもいいの。私はずっとお前みたいな奴に、好き勝手されてきた。でも、もう終わり。今日からは私が支配者よ。」彼女は冷ややかな笑みを浮かべた。
俺は彼女の言葉が冗談でないことを理解し、体の震えが止まらなくなった。「ふざけんな!元に戻せ!」
「それはどうかしら?…うーん、そうね。お前が私に勝てたら考えてあげるよ。」彼女はわざとらしく考えるふりをしてから、俺に勝負を持ちかけた。
しかし、俺の体力ではまともに抵抗できるはずもなく、あっさりと抑え込まれてしまった。
「やっぱり、無理だよね。」彼女は勝ち誇った顔で俺を見下ろし、俺はそのまま教室の床に座り込んだ。彼女の力が強いというよりは、今の俺があまりにも無力だったのだ。
それから数時間、紗英になった俺は何もできず、彼女の好き勝手されるのを見守るしかなかった。
彼女は俺の身体で、クラスメイトたちに近づき、普段なら絶対にしないような言動を繰り返した。
「田中、ちょっとこの格好どう?」彼女は俺の姿で女子制服を着て、クラス中の注目を集める。
「なにやってんだ、バカかよ…」俺は心の中で呟いたが、紗英は楽しそうに笑っていた。
数時間後、ようやく元の体に戻ることができた俺だったが、その直後に待ち受けていたのは、学校からの停学処分だった。
紗英が俺の身体で引き起こした行動が問題視されたのだ。
「ふざけんな…あいつ…!」俺は怒りに震えながらも、反撃を誓った。
しかし、その夜、再び紗英と対峙した時、彼女は冷酷に言い放った。
「次は動物と入れ替えて、元に戻れなくするけど、それでもいいの?」その言葉を聞いた瞬間、俺は無言で首を横に振った。
「よろしい。それじゃ、今後は大人しくしてもらうわよ。」彼女は満足そうに微笑んだ。
俺はそれ以上何も言えず、彼女の前で完全に屈服するしかなかった。
いじめは絶対に駄目です。
やられた方はいつまでも心に傷が残ります。
なので、このくらいは反撃されても仕方ないかと。
むしろ一発で致命傷にしないだけ優しいくらいですね。
もっととんでもない話にしても良いかと思いましたが
作ってる自分の精神が保たなそうなのでやめました。
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