静かな喫茶店の隅。
桜色のスウェットとロングスカートを身にまとった沙月(さつき)は、目の前のコーヒーカップを軽く揺らしながら話し始めた。
「ねえ、翔太くん。男女が入れ替わったら、人生ってどう変わると思う?」
翔太は彼女の言葉に戸惑いながらも、笑って返した。「そんな話、急にどうしたんだよ。まさか漫画とかの読みすぎ?」
「まあね。でも、もし本当にできるなら面白そうだと思わない?」
沙月の瞳には妙な輝きが宿っていた。
翔太はその視線に少しだけ圧倒されながらも、軽く笑って話を流そうとした。
「まあ、仮にできたとしても、俺は嫌かな。男でいる方が楽だし。」
「本当にそう思う?」沙月は顔を近づけ、囁くように言った。「じゃあ、試してみる?」
その一言が、翔太の人生を大きく変えるきっかけとなった。
翌朝、翔太が目を覚ました瞬間、違和感に気づいた。
布団の中で手を動かすと、自分の体がいつもと違う感覚に包まれている。
胸に触れると柔らかい感触があり、下腹部にはあるべきものがなかった。
「えっ、なにこれ!?」
驚きで跳ね起きた翔太は鏡を見た。
そこに映っていたのは、自分の知る限りもっとも馴染み深い顔──沙月の顔だった。
「嘘だろ……」
混乱する彼をよそに、部屋のドアが軽くノックされた。
入ってきたのは、翔太の身体を持った沙月だった。
「おはよう、翔太くん。どう、私の体?」沙月はニヤリと笑った。
「な、なんでこんなことを……!」
「だって、男になりたかったんだもん。いろいろ便利そうだし。」
沙月の軽い言葉に、翔太は怒りが湧いた。「冗談じゃない!早く元に戻せ!」
しかし沙月はその要求を軽く流し、翔太の肩をポンと叩いた。「まあまあ、少しの間だけ我慢してよ。お互い、新しい経験ができるんだから。」
沙月は男性の体を最大限に活用しようと試みた。
職場ではその力強さで同僚から頼りにされ、道を歩けば以前よりも視線を感じずに済む。夜道も怖くなかった。
「やっぱり男っていいなあ。」
一方で翔太は沙月の体で慣れない日々を過ごしていた。
スカートの扱いに戸惑い、外出するたびに注がれる視線に神経を尖らせる。
それでも少しずつ慣れていき、次第に沙月としての自分を受け入れ始めていた。
ある日、二人が再び喫茶店で向き合った。沙月が口を開いた。「翔太くん、そろそろ元に戻らない?」
しかし翔太はゆっくりと首を振った。「いや、もういいよ。僕、この体でもやっていける気がする。」
「は? 冗談でしょ?私が戻りたいって言ってるのに!」
「だったら、沙月もそのままでいいじゃん。男になりたかったんだろ?」
「そんな簡単な話じゃないの!」
声を荒げる沙月に対し、翔太は冷静に答えた。「沙月が勝手に始めたことだろう?それに、僕はもう慣れたんだ。この体の方が悪くないって思うようになった。」
沙月は何かを言い返そうとしたが、翔太の毅然とした態度に言葉を失った。
その後、二人の生活はそれぞれに続いていった。
沙月は男性の体で新しい日々を送りながら、自分の選択を悔やむことも多かった。
そして翔太は沙月としての人生を楽しみ始め、彼女以上に女性らしい振る舞いを身につけていった。
「本当に、これで良かったのかな……」
沙月がふと呟いたその言葉に答える者はいなかった。
隣の芝生が青く見えることもありますが
実際にその立ち位置になってみるとそうでもなかったり。
個人的には男側の立ち位置の方が色々楽な気がしますが
かといって、奪い取っても多分相応に苦労するでしょうね。
翔太君は慣れたみたいですが、女性側の苦労だって色々あるし
女性になったからって人生変わるわけでもないのかと。
結局は本人次第ですね。
専業主婦やれるんなら女性になるのもありと思ったりしますが
そもそも時代的に専業主婦なんて出来る人殆どいなさそうだし。
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