「やったー！ 私の勝ち！」
満開の桜並木の下、美咲の歓声が青い空に響き渡る。
息を切らしながらゴールラインを越えた悠斗は、膝に手をつき、悔しさに顔を歪めていた。
「くそっ、あと一歩だったのに……」
高校三年生の春、新学期が始まってすぐの体育の授業はマラソンだった。
運動神経抜群の悠斗は、毎年学年トップクラスの成績を誇っていた。
しかし、今年の美咲は一味違った。
冬休み明けから急に部活を始めた美咲は、日に日にタイムを縮め、体育教師も驚くほどの成長を見せていたのだ。
そんな美咲から、悠斗はふと勝負を挑まれていた。
「悠斗くん、今年のマラソン、私と競争しない？ 負けた方が、勝った方の言うことなんでも聞くってのはどう？」
悠斗は自信満々にその挑戦を受けた。
まさか自分が負けるとは露ほども思っていなかったのだ。
しかし、結果は美咲の圧勝だった。
美咲は悠斗が指定したタイムを軽々とクリアし、悠斗は美咲が指定したタイムをわずかに上回ってしまった。
「さーて、罰ゲームは何にしてもらおうかな？」
にこやかに微笑む美咲の顔が、悠斗には悪魔のように見えた。
放課後、人通りの少ない旧校舎の裏に呼び出された悠斗は、美咲の手に握られた物体を見て、思わず後ずさりした。
「ま、まさか……これ、セーラー服、だよな？」
「うん。私のセーラー服。もちろん、悠斗くんのサイズに合うように、大きいサイズを用意しておいたよ」
美咲は、にやりと笑い、悠斗にセーラー服を押し付ける。
「いや、無理だろ！ 男がセーラー服なんて！」
「罰ゲームは罰ゲームだよ。それに、私は悠斗くんの制服を着て男装するから、おあいこでしょ？」
美咲はそう言うと、悠斗の制服を受け取り、手早く着替え始める。
普段の可愛らしい美咲からは想像もできないほど、男装した美咲は凛々しく、まるで本当に男子学生のようだった。
悠斗は観念し、しぶしぶセーラー服に袖を通す。
白いブラウスに紺色のスカート、そして胸元には赤いリボン。
鏡に映った自分の姿に、悠斗は衝撃を受ける。
「うわぁ……」
似合わない。似合わないにもほどがある。
自分がこんな格好をしているなんて、誰にも見られたくない。
「ほら、悠斗くん、ちゃんと着替えた？ さあ、早く帰ろう！」
美咲は、悠斗の背中を押して、校門へと向かう。
悠斗は、周りの視線が気になって、うつむき加減で歩く。
しかし、美咲はそんな悠斗を気にする様子もなく、楽しそうに話しかけてくる。
「ねぇ、悠斗くん、意外と似合ってるよ。可愛いじゃん」
「やめろ、美咲！ からかうなよ！」
悠斗は顔を真っ赤にして反論するが、美咲は楽しそうに笑うばかりだった。
桜並木の続く帰り道、悠斗は美咲のセーラー服を着て、屈辱と恥ずかしさに耐えながら歩いていた。
しかし、美咲はまるで悪気がないかのように、満面の笑みで悠斗に話しかけ続ける。
「ねぇ、悠斗くん、普段はこんなこと絶対できないでしょ？ いい経験じゃん」
「いい経験なわけないだろ！ 誰かに見られたらどうすんだよ！」
悠斗は顔を覆い隠すように俯くが、美咲はそんな悠斗の様子を見て、さらに面白がる。
「大丈夫だよ、この時間ならほとんど人いないし。それに、もし見られても、悠斗くんが可愛いからきっと誰も何も言わないよ」
美咲の言葉に、悠斗はさらに顔を赤くする。
しかし、美咲の屈託のない笑顔を見ていると、悠斗は少しずつ恥ずかしさが薄れていくのを感じていた。
やがて、二人は美咲の家の前に到着する。
「さ、悠斗くん、うち上がって着替えよっか」
美咲に促され、悠斗は美咲の家に足を踏み入れる。
美咲の部屋は、可愛らしい雑貨やぬいぐるみで飾られていて、女の子らしい雰囲気が漂っていた。
「じゃあ、悠斗くん、ここで着替えててね」
美咲はそう言って、部屋を出て行こうとする。
悠斗はほっと胸をなで下ろすが、すぐに美咲が引き返してくる。
「あ、そうだ、悠斗くん、せっかくだから、もっと可愛く変身してみない？」
美咲はそう言って、クローゼットから何やらごそごそと取り出す。
それは、様々な色のウィッグや、きらびやかなメイク道具だった。
「え、なにこれ？」
「私のコレクション！ ほら、悠斗くん、似合いそうなウィッグがあるよ」
美咲は、悠斗の頭に茶色のロングウィッグを乗せる。
鏡に映った自分の姿は、先ほどとは全く違う、見慣れない女の子の姿になっていた。
「うわぁ……」
悠斗は、自分の変身ぶりに驚きを隠せない。
美咲は、そんな悠斗の顔に、楽しそうにメイクを施していく。
ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ、リップ。
美咲の手によって、悠斗の顔はどんどん女の子らしくなっていく。
「どう？ 可愛い？」
美咲の言葉に、悠斗は思わず鏡の中の自分に見とれてしまう。
確かに、さっきまでの自分とは全く違う、可愛い女の子がそこにいた。
「あ、あとこれね」
美咲はそう言って、小さな箱を取り出す。
中には、レースやフリルがあしらわれた、可愛らしい下着が入っていた。
「これ、まさか……」
「うん、悠斗くん用の下着。サイズもぴったりだよ」
悠斗は絶句する。
下着まで交換させられるなんて、想像もしていなかった。
しかし、美咲はそんな悠斗の様子を気にする様子もなく、楽しそうに下着を渡してくる。
「さあ、悠斗くん、これで完璧！ 外に出かけよう！」
美咲に手を取られ、悠斗は美咲の家を出る。
桜並木の続く帰り道、悠斗はセーラー服に身を包み、ウィッグを被り、メイクを施した自分の姿に、まだ慣れないでいた。
しかし、美咲の楽しそうな笑顔を見ていると、悠斗は少しずつ恥ずかしさが薄れていくのを感じていた。
二人は、夕暮れの町を歩く。
周りの視線が気にならないわけではないが、悠斗は美咲と話しているうちに、だんだんと心が解放されていくのを感じていた。
「ねぇ、美咲。こうやって歩いてると、なんか楽しいな」
悠斗の言葉に、美咲は満面の笑みを浮かべる。
「でしょ？ 悠斗くん、可愛いから、きっとみんな悠斗くんのこと見てるんだよ」
美咲の言葉に、悠斗はまた顔を赤くする。
しかし、その顔には、先ほどの屈辱感や恥ずかしさはなく、どこか楽しそうな表情が浮かんでいた。
悠斗は、美咲と一緒に、夕暮れの町を歩き続ける。
桜の花びらが舞い散る中、二人の笑い声が、町に響き渡っていた。
アマゾンや楽天を探すと、男性が着れる大きいサイズのセーラー服が売ってるので
着てみたい人は買っても良いと思いますよ。
まあ、コスプレ用は生地薄いし安っぽいですが。。。
ウィッグって、割と女性も持ってるんですよね。
髪型変えるとか、ショートなのにたまにロングでコーデしたくなったり。
後々は↑のような流れになる予定。
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