
「好きです! 俺と付き合ってください!」
放課後の教室。
クラスの人気者、藤崎彩花に告白するために、俺――坂本陽介は彼女を呼び出した。
緊張で喉がカラカラになりながらも、精一杯の想いを伝えた。
藤崎は少し驚いたような顔をしたが、すぐに申し訳なさそうに視線を逸らす。
「ごめんね、陽介くん……そういう風には見られないかな」
「え……?」
「あのね、私、男の人と付き合うなら、女友達みたいに気軽に話せる人がいいの。正直、陽介くんってちょっと……うーん、がっしりしてて、ゴツい感じだから……」
衝撃的な言葉だった。
まさか、見た目のせいで振られるなんて思ってもみなかった。
「そ、そうか……」
俺は情けなく返事をすると、藤崎は申し訳なさそうに小さく微笑んで教室を後にした。
残された俺は、机に突っ伏して大きく息を吐いた。
(見た目が原因で振られるなんて……そんなこと、あるのか?)
でも、藤崎は嘘をつくようなタイプじゃない。
つまり、本当に「男っぽすぎるから無理」ってことなんだろう。
そう考えると、悔しさがじわじわとこみ上げてきた。
(だったら……変わってやるよ)
俺は拳を握りしめ、心の中で決意した。
それからの俺は、徹底的に「自分磨き」を始めた。
まずは減量からだ。
今までは部活もしていなかったから、脂肪がしっかりついていた。
食生活を見直し、毎日ランニングをすることで、数週間で体が締まり始めた。
次にスキンケア。
最初は何をすればいいのかわからなかったが、妹の化粧水をこっそり使ってみたり、ネットで調べたりして、少しずつ肌の手入れを始めた。
ストレッチも欠かさない。
しなやかな体を作るため、毎日風呂上がりに柔軟運動を繰り返した。
最初は慣れないことばかりで大変だったが、少しずつ変化が見えてくると楽しくなってきた。
そして、数か月後――
鏡に映る自分の姿を見て、俺は息をのんだ。
(……誰だ、こいつは)
輪郭がシャープになり、肌はなめらかになっている。
以前のような男臭さは消え、まるで中性的な美少年のようだった。
「ここまで変われるもんなんだな……」
俺は感慨深げに呟くと、クローゼットからウィッグを取り出した。
試しにネットで買ってみたロングの茶髪ウィッグ。
そして、妹にこっそり借りたセーラー服を手に取る。
(……せっかくだし、着てみるか)
ウィッグを被り、セーラー服に袖を通す。
スカートの裾を整え、黒いローファーに足を通す。
そして、鏡の前でポーズを取ってみた。
「……っ!」
そこに映っていたのは、俺の理想の女の子だった。
スラリとした体型に、白い肌。長い髪がふわりと揺れ、セーラー服がしっくりと馴染んでいる。
「これが……俺……?」
思わず頬に手を当てる。
指先に感じる肌の柔らかさが、自分のものとは思えなかった。
「……これなら、藤崎も……」
そう思ったときだった。
ピロリン♪
スマホにメッセージが届いた。
『坂本くん、ちょっと話せる?』
送り主は――藤崎だった。
翌日、俺は藤崎と校舎裏で向き合っていた。
「久しぶりにちゃんと話すね」
藤崎は少し戸惑ったような表情で俺を見ていた。
「なんかさ、最近の陽介くん……すごく変わったよね」
「……そうか?」
「うん。前より優しい雰囲気になったし、なんだろう……すごく綺麗になったというか」
彼女は言葉を探しながら、恥ずかしそうに言った。
「だから……もしよかったら、改めて付き合わない?」
その瞬間、心臓が大きく跳ねた。
(……俺、これが目標だったんじゃないのか?)
ずっと努力して、藤崎に振り向いてもらえるように頑張った。
それが今、現実になろうとしている。
でも――
「……ごめん」
俺は藤崎の申し出を、断った。
彼女は驚いた顔をした。
「え、どうして?」
「たしかに、俺は変わった。でも、それは君に好かれるためじゃない」
俺は微笑む。
「俺自身が、”理想の自分”に近づきたかったんだ」
「陽介くん……」
「今の俺は、女装して鏡を見るのが楽しい。もっと可愛くなりたいって思うし、この道を極めたいって思ってる」
藤崎はしばらく沈黙していたが、やがてクスッと笑った。
「そっか……うん、なんかそれはそれで陽介くんらしいかも」
「ありがとう。俺、これからももっと綺麗になるよ」
「応援する!」
藤崎は明るく笑い、俺の手を取った。
「でも、友達としてなら、これからも仲良くしてくれる?」
「ああ、もちろん!」
俺たちは固く握手を交わした。
俺の恋は終わった。
でも、代わりに見つけた。
新しい目標――それは、女装の高みを目指すこと。
その夜、俺は再び鏡の前に立っていた。
「……よし」
ウィッグを整え、メイクを施す。
「まだまだ、いけるな」
鏡の中の自分は、以前よりもさらに洗練されていた。
そして俺は、にっこりと微笑んだ。
「これからが、本当のスタートだ」
新しい世界が、俺を待っている――。

新しい目標を見つけた?むしろ見失ってるような?
がつがつした男が苦手な女性はいるみたいですが
それで女装にはならないんじゃないかな?
まあ、私自身女装した姿は相方に見せてますし
女装した状態で出かけたこともありますけどね。
ちなみに私は初めから自分でやりたかっただけです。
コメント