大学の昼休み、いつも同じベンチに座って昼食をとっていた俺、伊藤翔太は、周囲には目立たない普通の男だ。
何の特別な才能も、何か人に自慢できるものもないが、それでも平凡な生活に満足していた。
しかし、そんな日常が一瞬にして壊れることを、俺はまだ知らなかった。
その日、俺は教室でいつも通りのんびりとノートを整理していた。
次の授業まで少し時間があり、ぼんやりと窓の外を見ていたとき、不意に話しかけられた。
「ねえ、ちょっと時間ある？」
振り向くと、そこには美しい女性が立っていた。
長い髪、華やかな笑顔、周囲の男子が羨望の眼差しを向けるような姿。
彼女の名前は美咲。俺とは住む世界が違う人間だと一目で分かる。
「俺に…話しかけてるの？」
驚きながらも、俺は何とか口を開いた。彼女が俺に話しかける理由など想像もつかなかった。
「うん、ちょっと頼みたいことがあるの」
美咲はまるで俺がずっと待っていたかのように、自然に近づいてきた。
そして、甘い声で話し始めた。
「実は…最近ちょっと困っててね。もしよかったら、力を貸してほしいの」
美咲の言葉に惑わされるように、俺はいつの間にか彼女の頼みを聞き入れることになった。
彼女が語ったのは、金銭的に困窮しているという話だった。
家族に頼れず、仕事も見つからず、今は日銭を稼いで何とか生活しているという。
誰にも相談できず、孤立している彼女の話を聞くうちに、俺は次第に同情し始めた。
「そんなに大変だったんだ…」
俺は小さなバイトしかしていなかったが、それでも彼女の状況に比べれば恵まれていると思った。
そんな俺を見透かしたように、美咲は微笑んだ。
「そうなの。でも、あなたなら信頼できるって思ったの。だから、お願いがあるんだけど…」
彼女の言葉に俺はますます引き込まれていった。
そして、その日の夜、俺は彼女と共に一緒に街を歩くことになった。
彼女の話に夢中になり、気づけば人けのない路地に立っていた。
「ここなら大丈夫…よね？」
美咲はそう言って、俺に向かって笑った。
その笑顔はどこか不気味で、俺の背筋に寒気が走った。
「な、何が大丈夫って…？」
俺が不安を感じ始めた瞬間、彼女は急に真剣な表情になった。
そして、突然、俺に何かを押し付けた。
「これをつけてくれる？ちょっとした…実験なんだけど。」
怪しい装置に戸惑いながらも、俺は彼女の手から装置を受け取った。
そしてその瞬間、世界がぐるりと回り、意識が遠のいていくのを感じた。
目を覚ましたとき、俺は全く別の場所にいた――いや、場所ではなく、体が違っていた。
鏡に映るのは美咲の顔。俺は彼女の体に入れ替わってしまったのだ。
目の前には、俺の体に入った美咲が立っていた。
彼女の笑顔は変わらず、それどころか、さらに残酷な色を帯びていた。
「ふふ、どう？新しい自分の姿は？」
彼女の言葉が、俺を絶望の淵に追い込んだ。
なぜこんなことが起きたのか、理解する暇もなく、彼女の計画はすでに動き出していた。
「実はね、私にはお金も頼れる人もないの。だから、ずっとどうしようか考えていたの。で、思いついたのが…あなたみたいな目立たない男を利用すること。」
俺は呆然として言葉も出なかった。
彼女の真の目的は、俺を罠にかけ、自分の体を捨てて逃れることだった。
「これから、あなたには私として生きてもらう。私はあなたの体で、新しい人生を始めるの。いいでしょ？」
俺は必死に抗議しようとしたが、美咲は冷酷に笑い続けた。
彼女には一切の良心がない。その場を立ち去る前に、彼女は最後にこう言い放った。
「ありがとう、これから自由に生きさせてもらうね。あなたもせいぜい頑張って、私の体で生活しなさい。」
それからの日々は地獄だった。
俺は美咲の体で彼女の負債を背負い、彼女の名で日銭を稼ぎながら生きるしかなかった。
彼女の姿をまといながら、誰にも助けを求めることができないまま、ただ彼女の計画に従うしかなかった。
彼女は俺の体で自由を手に入れ、俺のことなど完全に忘れているだろう。
俺は彼女の影として生き続け、彼女の負の遺産を引き受けながら、かつての自分を取り戻す方法も見つけられない。
こういうのもハニートラップなんですかね？
生活に困っている女性に頼られたら、何人かは下心持って接しそうな気がします。
人生そのものを肩代わりするなんて考えないとは思いますが。。。
私の場合はボーナス支給日付近に急に借金申し込んでくる奴が昔いましたね。
一度貸したとき返済に数年かかったので、もう次はないし会う気もないですが。
金に困って返済期限が迫ってるのに煙草吸ったりしてるのが不思議ですね。
後は借りられる前提で申し込みをされてもねぇ。。。
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