「真司くん、入れ替わりって興味ない?」
放課後の写真部の部室。
部長の優菜が、机に頬杖をつきながら突然そんなことを言い出した。
「入れ替わりって……体が、ってこと?」
「そうそう。男女入れ替わりとか、面白そうじゃない?」
冗談かと思って笑い飛ばそうとしたが、優菜の目は本気だった。
「いやいや、そんなの現実にはあり得ないし……」
「でもね、これを使えばできるかもよ。」
優菜が机の上に置いたのは、小さなペンダント。
どこか古びていて、異国の雰囲気を感じさせる。
「これ、どういうものなの?」
「海外旅行のお土産でもらったんだけど、『二人が同時に触れるとお互いの姿が変わる』って説明されてね。まあ、試してみたことはないけど。」
優菜はいたずらっぽく笑いながら、ペンダントを指先で転がした。
「いや、それ本当にそんなこと起きたら困るでしょ……」
「むしろ面白いでしょ?ほら、私たち写真部なんだから、相手の視点からポートレートを撮るとか、新しい作品作りのヒントになるかも!」
半ば強引に話が進み、真司は仕方なくペンダントに手を伸ばした。
優菜も同時にペンダントに触れる。すると――。
次の瞬間、眩しい光が部室を包み込み、真司は目を閉じた。
気がつくと、自分の声が遠くなり、目の前には……自分の姿が立っている。
「え、これ……本当に入れ替わったのか?」
真司の声で話している優菜が、自分の手や足をじっと見ている。
「うわ、本当だ……これ、私の身体? なんか背が低い!」
優菜が驚きながら手を振ったり足を跳ねたりしているのを見て、真司は自分の声で慌てて制した。
「落ち着いてよ! これ、どうやったら戻れるの?」
「さぁ? 説明には何も書いてなかったけど、試してみたら戻れるかもね!」優菜の無責任な言葉に、真司は頭を抱えた。
優菜の身体に入った真司は、思った以上に彼女の世界が複雑であることを知る。
女子特有のスカートの動きや長い髪の扱い方に四苦八苦しながら、写真部の活動に参加することになった。
「これ、重いな……」優菜のカメラバッグを肩にかけながら呟く。
彼女の普段の明るさの裏に、こんなにも労力をかけていたとは知らなかった。
一方、真司の身体に入った優菜は男子生徒たちから軽く声をかけられ、真司が普段いかに目立たない存在だったのかを実感していた。
「真司くんって、こんな地味な生活してるのね……。でも、悪くないかも。」
優菜は男子の制服のポケットに手を突っ込み、ふと真司の撮った写真をカメラで確認する。
そこには、普段の彼女の何気ない瞬間が映っていた。
「こんなふうに私を見てたんだ……」優菜は少し頬を染めながら、真司の視点を理解し始めていた。
放課後、再び部室に集まった二人。
戻る方法が分からないまま、途方に暮れていた。
「優菜、こんなの冗談じゃ済まないぞ……どうすればいいんだ。」
「まぁまぁ、焦らないで。せっかくだから、お互いの視点をもう少し楽しんでもいいじゃない。」
「楽しむって……」
真司が不満げに言い返すが、優菜は鏡の前で自分の姿(真司の身体)をチェックしていた。
「こういうのも案外悪くないわよ。普段と違う自分になるって、結構新鮮だし。」
「それはお前が楽観的すぎるんだよ……」
ペンダントを再び同時に触ると、再び眩しい光が放たれた。
次に目を開けると、それぞれ元の身体に戻っていた。
「戻れた……!」真司は安堵のため息をついたが、優菜はどこか名残惜しそうだった。
「また、いつかやってみたいわね。真司くんの視点から見る世界、面白かったし。」
「もう二度とごめんだよ……」
そう言いながらも、真司の心の中にはほんの少し、優菜への感謝と好奇心が芽生えていた。
なんかポーズの意味はあんまりないですね。
他人の視点って興味深いし、楽しいと思います。
そういう視点を持つって重要ですよね。
身体を交換してまでやる必要があるかは分かりませんが。
むしろ私は身体の交換を目的にしますねきっと。
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