冷たい冬の空気が漂う中、響(ひびき)と菜々美(ななみ)は、初詣のために神社の長い列に並んでいた。
周りには家族連れやカップルが溢れており、初詣の賑わいが年の始まりを感じさせる。
「寒い……」菜々美は小さく震えながら呟き、マフラーをさらに首に巻き付けた。
響は彼女の様子を見てクスッと笑う。「そんなに寒いなんて、女の子は大変だなぁ。俺なら余裕だけどね。」
「何よその態度!」菜々美はムッとした顔で響を睨んだ。「響だってこんな寒さ、耐えられるわけないでしょ?」
「俺をなめるなよ。男はこういうのに耐える力があるんだよ。」響は腕を組んで自信満々に答えた。
その態度が気に障ったのか、菜々美は不敵な笑みを浮かべながら言った。「……じゃあ、その自信がどこまで続くか試してみる?」
「どうやって試すんだよ?」響は首を傾げた。
菜々美はポケットから小さなお守りを取り出し、不思議な念を込めるように見つめた。
「いい? これでちょっと耐えてもらうわよ。」次の瞬間、二人の間に奇妙な感覚が走った。
「な、なんだこれ!?」響が叫んだ。
見下ろすと、そこには菜々美の赤い着物を着た自分の姿があった。
一方、菜々美は響の体に移った自分の手を眺めながら、「ふふっ、これで響がどれだけ耐えられるか見ものね」と得意げに笑った。
「おい、何したんだよ!?」響は混乱しながら菜々美に詰め寄ったが、着物の裾がもつれそうになり慌てて体勢を整えた。
「神社の特別なお守りを使ったの。お参りが終わるまで、このままだよ。」菜々美――響の体の中の彼女――は涼しい顔をして答えた。
「ふざけんなよ! こんな格好で寒いなんて冗談じゃない!」響は声を荒げたが、周りの参拝客が振り返るのを見て、小声で「……マジで無理だって」と呟いた。
「ほら、寒いってことを身をもって分かってもらわないとね。」菜々美は微笑んだ。
時間が経つにつれて、響は寒さの厳しさを痛感していた。
冷たい風が着物の裾から入り込み、足元は草履の薄い底を通して冷え切っている。
「ちょっと待て、これ本当にヤバいって……」響は震える声で言った。
「まだ余裕って言える?」菜々美が響の体でニヤリと笑った。
「……言えねえよ! ごめん、俺が悪かった!」響はとうとう菜々美に頭を下げた。「寒さなめてました! 本当にごめんなさい!」
その素直な態度に、菜々美は思わず吹き出してしまった。「ふふっ、分かればいいのよ。でも、体を戻すのは家に帰ってからだからね。」
「えっ!? まだ戻さないのかよ!」響は叫んだが、菜々美は「これも修行よ」と言って意に介さない。
参拝を終えた後、二人はお神酒を振る舞われた。
響は震える手で杯を受け取り、一口飲むとようやく体が温まるのを感じた。
「これ、結構効くな……」響は少し顔を赤らめながら呟いた。
「でしょ? 女の子の体は冷えやすいんだから、ちゃんと暖かくしてあげなきゃダメよ。」菜々美は意味深に微笑んだ。
帰り道、響は慣れない草履と着物に四苦八苦しながらも、なんとか歩き続けた。
途中で雪がちらつき始め、夜道を白く染めていく。
「やっぱり寒いけど……景色はきれいだな。」響はふと呟いた。
「ふふっ、少しは女の子の気持ちが分かってきたんじゃない?」菜々美が声をかけると、響はしぶしぶ頷いた。
家に着くと、菜々美は再びお守りを取り出した。「じゃあ、戻すわよ。」
「やっとか……」響は安堵の表情を浮かべた。
お守りに念を込めると、二人の間に再び不思議な感覚が走り、元の体に戻った。
響は自分の体を確認し、深く息をついた。
「もう二度と寒さをバカにしない!」響は力強く誓った。
「それならいいけど、また偉そうなこと言ったら今度は一週間入れ替えるからね。」菜々美は笑いながら釘を刺した。
響は苦笑しながら、「もうこりごりだよ」と答えた。
二人は湯気の立つお茶を手に、年明けの穏やかな時間を過ごした。
初詣の寒さは厳しかったが、互いの気持ちを知る良い機会となったようだった。
皆さんは着物を着て初詣は行ったんでしょうか?
私は普段着で行きました!
着物なんて着てたら子どもを捕まえられないし。
賽銭入れて、おみくじ引いて
毎年変わらないですね。
そして今年も相変わらず駄文を書き続けたいと思います。
あと、写真は昨日のを使い回してます。
コメント