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ワンピースを着た僕【女装】

翻訳

部屋の中で静かに時計の針が進む音が響いていた。

夏の夕暮れが差し込む窓辺には、淡い橙色の光が部屋全体を包んでいる。

彼――裕也(ひろや)は、机の上に置かれたワンピースをじっと見つめていた。

心臓が少し早く脈打つのを感じながら、手を伸ばしかけるが、一瞬ためらいを覚える。

「本当に着るのか、これ…」

頭の中で何度も繰り返される疑問。

それでも、彼の心の奥底では既に決断は固まっていた。

買ってしまった以上、そしてここまで準備をしてしまった以上、後戻りはできない。

数日前、ウィンドウショッピングをしている最中に目が合ったこの紺色のミニスカートワンピース。

ずっと抑え込んでいた衝動が、その瞬間に爆発したのだ。

「これを着れば、少しだけでも彼女たちの気持ちがわかるかもしれない…」

裕也はそう自分に言い聞かせながら、ゆっくりと服を手に取り、体に押し当てた。

ミニスカートの部分は想像以上に短く、彼の膝上十センチあたりで止まる。

スカートを撫でる手が少し震えた。

今からすることが常識の範疇を超えているのはわかっている。

それでも、心のどこかでずっと夢見ていた世界へ踏み込む扉が目の前に開かれている。


「やっぱり、これしかないな…」

彼はついに自分にそう言い聞かせ、着替えを始めた。

普段はスーツやカジュアルなシャツ、ジーンズを着るのが彼の日常だった。

しかし、今日は違う。

ワンピース――女性らしい服を着ることで、今まで感じたことのない新しい自分に出会えるかもしれないという期待感に胸が膨らんでいた。

ワンピースを頭からゆっくりと被り、肩の部分をしっかりと整える。

生地が軽く肌に触れる感覚に、思わずため息が漏れた。

「これが、女の子の服か…」

鏡の前に立ち、慎重にスカートを整えながら、彼は自分の姿をまじまじと見つめた。

腰の部分は自然と引き締まり、スカートの裾がふわりと揺れるたびに、女性のようなシルエットが浮かび上がる。

肩も柔らかく見え、なんとも言えない違和感と同時に、妙な高揚感が心の中に渦巻いた。

「想像してたより、悪くないな…」

だが、ふとした瞬間、動いた体に連動してスカートが僅かに上がり、彼の太ももが露わになった。

焦ってスカートの裾を引っ張るが、丈が短すぎて思うように隠すことができない。

「危ない…これじゃ外には出られないな」

苦笑いしながら、もう一度スカートを直すが、どうやっても太ももは見えてしまう。

やっぱり外でこんな服を着て歩くのは無理だと悟った。

だが、部屋の中なら問題ない。

鏡の前で自分の姿を眺めるたびに、新しい感覚が彼を包み込んでいった。


「ふーん、こうやってみると、悪くないね」

裕也は一人で呟きながら、軽く回ってスカートをひらりと揺らしてみた。

スカートが風に乗って軽やかに舞うのを見て、思わず笑みがこぼれる。

その動作一つ一つが、新鮮で心地よい。

「女の子って、こういう感じなんだな…」

座ってみようと椅子に腰を下ろした瞬間、スカートがさらに上にずり上がり、彼は慌てて裾を引っ張った。

しかし、どう頑張ってもスカートは元の位置に戻らない。

太ももが見えそうになるたびに、彼の顔は少し赤く染まった。

「これじゃ、外では絶対無理だな…」

彼は何度も自分に言い聞かせるが、心のどこかで、このまま外に出たらどうなるのだろうという好奇心が湧いてきた。

外の世界で、この姿を誰かに見られることはないだろうか?

それとも、バレてしまったらどうなるのだろうか?

一瞬だけ、そのスリルに胸が高鳴ったが、すぐに現実に引き戻される。


「よし、もう少しだけ…」

裕也は鏡の前で再びポーズを取ってみた。

手を腰に当て、片足を軽く上げると、まるで雑誌のモデルのような気分になった。

彼の表情は少しずつ和らぎ、恥ずかしさが消えていった。

そして、心の中にあった不安も徐々に薄れていった。

「…楽しい」

誰もいない部屋の中、鏡に映る自分と対話するように、裕也は満足げに呟いた。

外では絶対にできないことを、今、自室でだけ体験している。

この小さな世界だけで許される特別な瞬間だった。

時間が経つにつれて、彼は少しずつその姿に慣れていった。

スカートの裾を何度も引っ張り、太ももが見えないように気をつけながら、再び椅子に座って足を組む。

「うーん、やっぱり丈が短いな…次はもう少し長めのやつを買うべきかな」

自嘲気味に笑いながらも、その心にはある種の達成感が残っていた。

自分の中の小さな夢を、今ここで叶えたのだ。

誰に見られることもないこの部屋で、彼は自分だけの秘密を共有することに成功したのだ。

数時間が経ち、裕也は再び元の服に着替えた。

ミニスカートワンピースを脱ぐとき、少しだけ寂しさが込み上げたが、彼は満足していた。

次はもっと自分に合った服を探してみようと、心の中で新たな計画を立てていた。

「また、やってみてもいいかもな…」

そんな思いを胸に、裕也はワンピースを丁寧に畳んでクローゼットの中にしまった。

誰にも言えない、彼だけの秘密の時間。それは、これからも続いていくのだろう。

普通の安物のワンピースです。

値段的にも別にためらう必要はないもの。

でも、コスプレじゃなく、女性物の服を初めて自分用に買うときは

結構どきどきするものです。

外に着ていったら丈が短過ぎて、階段やエスカレーターが危険でした。

周りはこんなものだというけれど、こっちはそんな余裕はない。

でもなんだかんだ気に入って、今でもクローゼットにかけられてます。

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