「本当に…やるの?」弱気な声で尋ねた僕に、彼女は悪戯っぽく微笑んだ。
「大丈夫、大丈夫!楽しいから信じて。」
そう言って、彼女は僕の腕を引き、自分の部屋に連れて行った。
部屋の中には、整然と並べられた化粧品やウィッグ、そして女性用の服が掛けられているラックがあった。
「これ着てみて!」彼女が渡してきたのは白地に黒いリボンのデザインが特徴的なブラウスと、すっきりとした黒のスカート。
「いや、でも…」困惑する僕の表情を見て、彼女は優しく肩を叩いた。
「大丈夫。私が手伝うから。」
しばらくして、僕は彼女の指示に従い、渡された服に着替えた。
鏡を見ないようにしている僕に、彼女は次々と動き回りながら手際よくメイクを施していく。
「目を閉じててね。はい、こっち向いて。」彼女の声に従いながら、僕はまるで操り人形のように動いていた。
ファンデーションの冷たい感触、アイシャドウを塗る筆の柔らかい刺激。
少しむずがゆい感覚が、次第に心地よくなっていく。
ウィッグをセットし、仕上げのリップを塗られた頃、彼女は満足げに頷いた。
「よし、完成!じゃあ、鏡を見てみて。」
「…誰…これ?」鏡の中の自分を見た瞬間、思わず言葉を失った。
そこには、見慣れた僕の顔ではなく、可愛らしい少女の姿が映っていた。
「信じられない…僕じゃないみたいだ。」触れてみても、そこにいるのは自分。だけど、まるで別人のような姿。
「可愛いでしょ?こういうのって新しい自分を見つける感じがして楽しいんだよね。」彼女の笑顔に、少しだけ気持ちが軽くなる。
「でも、これで終わりじゃないよ。」彼女の言葉に嫌な予感がする。
「外!?無理だよ!」慌てて抵抗する僕を彼女はぐいっと引っ張る。
「平気だって!誰もあなたが男だなんて思わないから!」彼女の自信満々な様子に、逃げる隙を失う。仕方なく彼女に従うことにした。
外の空気が思った以上に冷たくて、肩をすぼめた。
通りを行き交う人々が、皆僕の方を見ているような気がする。
心臓が喉まで跳ね上がるようで、まともに歩けない。
「ねえ、落ち着いて。ほら、笑ってみて?」彼女の励ましに少しだけ安心し、ぎこちなく微笑む。
すると、すれ違う人が小さな声で「可愛い子だね」と呟いた。
その言葉に、驚きと共にほんの少しの嬉しさが混じった。
もしかしたら、僕でも…こんな風に見えるんだ、と。
その夜、彼女の家に戻ってきたとき、僕はまだその感覚を整理できずにいた。
「どうだった?」問いかける彼女に、僕は少しだけ微笑んで返した。
「…悪くなかったかも。」
彼女の声に乗せられるままの一日だったけれど、鏡の中に映った新しい自分が、少しだけ愛おしく思えた。
今の時代なら、女の子の方がこういう遊びを提案してきそう。
男性にメイクしてくれるような店も、スタッフは女の子多いし。
もちろん男性もいるみたいですが。
それよりメンズサイズのレディース服って結構多いよね。
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