夕暮れの街を歩いていると、ふと目に留まったのは、漆黒のゴスロリ服に身を包んだ少女だった。
髪には黒いベレー帽、ふんわりとしたスカートにレースが施され、全身からどこか儚げで幻想的な雰囲気が漂っている。
彼女が通り過ぎるたびに、周りの視線を引きつけていた。
その姿は、まるで一瞬で僕の心を射抜いたかのようだった。
「なんて美しいんだろう……」
僕はその瞬間から彼女の姿に憧れを抱いた。彼女のようにゴスロリ服を着て、街を歩いてみたいという思いが頭を離れなくなった。
しかし、現実は簡単ではなかった。
僕はずっと太っていて、そのような華奢でエレガントな服を着ることは夢のまた夢だと思っていたのだ。
「でも、諦めたくない……彼女のようになりたい」
その日から僕はダイエットを決意した。
毎日の食事制限と運動。
最初は辛かったが、鏡に映る自分が少しずつ変わっていくたびに、次第にやる気が湧いてきた。
体重が減り、以前よりも服が合うようになると、ネットで見つけたゴスロリ服を眺める時間が増えていった。
数ヶ月後、ついに目標体重に達した僕は、以前から目をつけていたゴスロリ服を購入することにした。
黒を基調にしたロングスリーブのドレス、フリルがたっぷりと施されたスカート、そしてベレー帽。
ついに手に入れたその衣装を部屋で広げたとき、僕の心は喜びでいっぱいだった。
しかし、問題はここからだった。実際に着る勇気がなかったのだ。
男である僕がこんな可愛らしい服を着て、町中を歩くなんて……。
そんな迷いを感じていたある日、友人のケンジから連絡が来た。
彼には、僕がゴスロリ服に興味を持っていることを以前話していたが、ダイエット成功の話はまだしていなかった。
「ダイエット成功したんだって?おめでとう!で、ついにゴスロリデビュー?」
冗談混じりの口調だったが、彼のその一言が背中を押した。
「うん……実は、服も買っちゃった」
「マジか!すごいじゃん。でも、まだ着てないんだろ?」
「うん……まだ勇気がなくて」
「大丈夫だって!俺も一緒に付き合ってやるよ。そんなに似合うなら、町中で堂々と歩けばいいんだ」
ケンジの言葉は、僕に自信を与えてくれた。
結局、彼に背中を押され、その週末にゴスロリ服を着て外に出ることを決意した。
迎えた当日、僕は慎重にゴスロリ服を着た。
ドレスのファスナーを上げ、ふんわりとしたスカートの広がりを確認する。
鏡に映る自分は、まるで別人のようだった。
「本当に僕なのか……?」
ドキドキしながら髪をセットし、ベレー帽をかぶる。
最後に、黒のショートブーツを履いて、全身を鏡で見たとき、自分が憧れたゴスロリ少女に少しでも近づけた気がした。
「やっぱり似合ってるじゃん!お前、普通にゴスロリ女子だよ」
ケンジは驚いた様子で僕を見て、すぐにスマホを取り出して写真を撮り始めた。
正直、少し照れくさかったが、彼がそう言ってくれると、少しずつ緊張も解けてきた。
「じゃあ、行くか」
「うん」
町に出た僕たちは、いつもと違う視線を感じた。
人々の目は、僕に釘付けになっているように感じた。
しかし、ケンジが言った通り、堂々と胸を張って歩くことで、その視線も少しずつ気にならなくなった。
むしろ、心の中で「これが私なんだ」と思えるようになっていた。
「やっぱり、頑張ってよかったな」
そんなことを考えながら、僕は再びあのゴスロリ少女を思い出した。
彼女が僕に与えた影響は計り知れない。
そして今、僕もまた誰かに影響を与えられる存在になれたのかもしれない。
そんな希望を抱きながら、僕はケンジと一緒に町を歩き続けた。
めっちゃ色が変わった。
ヘッドドレスがベレー帽に見えたんですかね?
どっちにしろ、この格好で外を歩く勇気はないです。
袖のあたり邪魔でご飯食べるのも大変そうだし。
ゴスロリで外歩く人は尊敬の目で見てます。
動きづらいし、暑いし、目を引くし。
そもそもこれも借り物で、持ってないんですけどね。
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