クリスマス前の寒い夜。繁華街を歩く人々は、カップルや家族連れで溢れていた。
街はイルミネーションで煌びやかに飾られ、楽しげな空気が漂う中、一人でその雰囲気に溶け込めずにいた男、田中悠真(たなか ゆうま)は、偶然見つけたメイドカフェに足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ、ご主人様!」
扉を開けた瞬間、可愛らしい声が彼を出迎えた。
悠真は気恥ずかしさを覚えながらも、カウンター席に案内される。
そこで、ひと際明るい笑顔を浮かべたメイド、千春(ちはる)が接客にやってきた。
「今日のおススメはこちらです♪ クリスマス限定のホットチョコレート、いかがですか?」
千春の声は柔らかく、心地よい。悠真はつい、彼女の笑顔に見とれてしまった。
「じゃあ、それを一つ……」
注文を終えた悠真に、千春がふと話しかけた。
「クリスマス、何か予定ありますか?」
突然の質問に、悠真は戸惑った。顔を赤くしながら答える。
「いや、特にないかな。仕事も休みだし、何もすることがないんだ。」
千春は意味深な笑みを浮かべた。
「へぇ……暇なんですね。それなら、閉店後、少しお時間いただけますか?」
その言葉に、悠真の心は一気に高鳴った。
可愛いメイドに誘われるなんて、夢のような展開だ。
閉店時間になり、店内の明かりが少し暗くなると、千春が悠真を裏口へ案内した。
「ここなら他のお客さんに見られないので安心ですよ。」
彼女は微笑むと、悠真の手を取り、そっと部屋の中央へ誘導した。
「それで、話って何かな?」
悠真が少し緊張した様子で尋ねると、千春は真剣な表情になった。
「実は……お願いがあるんです。」
「お願い?」
「私、クリスマスくらい、普通にのんびり過ごしたいんです。でも、この仕事があって……」
千春の瞳が潤んだように見えた。悠真は断る理由が見つからない。
「そ、そんなことなら、協力するけど……具体的にどうするの?」
千春はニヤリと笑った。
「なら、少しだけ……私と“交換”してくれませんか?」
「交換って?」
悠真が困惑した瞬間、千春はポケットから取り出した小さな宝石のようなものを掲げた。
「ちょっと目を閉じてくださいね。」
次に目を開けたとき、悠真の視界は大きく歪んでいた。
見慣れた自分の手ではなく、細くて柔らかい手が目に入る。
鏡を見れば、そこにはメイド服を着た千春の姿が映っていた。
「えっ、何これ!?俺が……君に?」
目の前には、悠真の身体を使って笑顔を浮かべる千春が立っている。
「はい、これで準備完了です♪」
「おい、どういうことだ!?」
混乱する悠真をよそに、千春は悠真の服を身につけると、肩をポンと叩いた。
「じゃあ、私の仕事、よろしくお願いしますね。あなたなら大丈夫!笑顔で接客するだけですから♪」
「待って、ちょっと!」
「大丈夫、私の代わりに働いてくれれば、クリスマスが終わったら元に戻してあげますから!」
そう言い残し、千春は悠真の身体を使って颯爽と出て行った。
悠真は仕方なく、千春として仕事を始めることになった。
慣れない笑顔、可愛い声の出し方、そしてスカートの裾を気にしながらの接客は、彼にとって試練そのものだった。
「ご主人様、いかがですか?」
自分の声が高く甘い響きになっているのに驚きながらも、悠真は必死にお客の注文をこなしていく。
常連客からは「今日の千春ちゃん、ちょっとぎこちないね」と笑われる場面もあったが、次第に慣れてきた。
「意外と楽しいかも……?」
そんな風に思えたのは、クリスマスイブの夜が近づき、店内が温かな雰囲気に包まれていたからだ。
千春の代わりに過ごす時間は、思った以上に充実していた。
翌朝、千春が悠真の家から帰ってきた。
彼女はのんびりとクリスマスを楽しんだ様子で、満足そうに笑っていた。
「ありがとう、悠真さん。おかげで最高のクリスマス休暇になりました。」
「……俺は大変だったんだけどな。」
「でも、楽しそうだったじゃないですか?」
千春は宝石を再び取り出し、二人の身体を元に戻す準備をした。
「これで元通りね。はい、目を閉じて。」
再び目を開けると、悠真は自分の身体に戻っていた。
「なんだか不思議なクリスマスだったな……」
そうつぶやくと、千春はにっこり笑った。
「また暇だったら、ぜひ遊びに来てくださいね。次は、もっと特別な体験をさせてあげますから♪」
悠真は苦笑いしながらも、少し期待している自分に気づいていた。
クリスマスネタをまた使いまわす。
大体バイトしてる子に予定を聞かれたらシフト交代の話ですよね。
まさか身体を交換されるとは思わないでしょうか。
身体の交換以外は大体実体験です。。。
メイド喫茶ではないですが。。。
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