寒空の下、拓也は街の小さな教会の前で立ち止まっていた。
クリスマスイブの夜。
周りは恋人たちや家族連れで溢れているというのに、自分はひとりぼっち。
「くそ、なんで俺だけこんな寂しいんだよ……」
ふと目に入ったのは、教会の入り口に設置されたサンタクロースの大きな人形だった。
子どもたちがその前で写真を撮り、楽しそうに笑っている。
「サンタさん、俺にも彼女をくださいよ……マジで頼むって!」
半ば冗談で人形に向かってそう呟いた瞬間、教会の鐘が深々と鳴り響いた。
周りの景色が一瞬ぼやけ、次の瞬間、視界が暗転する。
目を開けると、見慣れない光景が広がっていた。
ふわふわの白い毛に覆われた真っ赤な衣装、そして細い腕。
「え、なにこれ?!」
慌てて立ち上がり、近くの窓に映った自分の姿を見て、言葉を失う。
そこにはサンタガールの衣装を着た少女が立っていた。
しかも、それは学校のクラスメイト、美月そのものだった。
「え、なんで美月の体に……?」
パニックになっていると、背後から低い声が響いた。
「おやおや、そんなに驚くことはないだろう?」
振り返ると、そこには本物のサンタクロースが立っていた。
赤い服に白いひげ、見間違えるはずもない。
「お前、さっき『彼女が欲しい』って言っただろう?だから、ちょっと特別な体験をプレゼントしてやることにしたんだ。」
「体験って……これ、美月の体じゃないですか!戻してください!」
サンタはひと笑いして言った。「そんなことを言うな。代わりに、この体で俺の手伝いをしてくれ。それが終わったら、ちゃんと元に戻してやるから。」
こうして拓也は、美月の体のまま、サンタクロースのプレゼント配りを手伝う羽目になった。
真っ赤なそりに乗り、夜空を駆ける感覚は非現実的だったが、不思議と悪い気はしない。
「次の家だ。ほら、これを持って行け。」
渡された袋には、小さなプレゼントが入っていた。
拓也は窓からそっと家の中に入り、クリスマスツリーの下にそれを置く。
寝ている子どもたちの顔を見ると、不思議な充足感が湧いてきた。
「これ、意外といいかも……」
そんなことを思い始めた矢先、サンタが言った。
「手伝いながら、もう一つの課題もクリアするんだぞ。」
「課題?」
「お前、自分がどれだけ周りを見ていないか気づいているか?たまには他人の視点で世界を見ろ。」
拓也は言葉を飲み込んだ。
美月の体で過ごす中で、クラスメイトだった彼女の意外な一面が見えてきた。
優しそうに見えて意外と責任感が強く、少し不器用な部分もある。
そして何より、周りの人をよく見ている。
夜が明けるころ、最後のプレゼント配りが終わった。
「よくやったな、拓也。さあ、元の体に戻してやる。」
サンタが指を鳴らすと、再び光が舞い、拓也は自分の体に戻っていた。
「ありがとうな、おっさん……いや、サンタさん。」
サンタは満足げに笑った。「来年もいい子でいろよ。」
次の日、学校で拓也は美月に声をかけた。
「な、なんか昨日……夢とか見なかった?」
美月は不思議そうに首をかしげたが、最後に微笑んで言った。
「熟睡してて憶えてないけど。いいことがあったの?」
その笑顔を見て、拓也は胸が少しだけ高鳴った。
「まあ、なんていうか……クリスマスの奇跡、かな。」
というわけで、もうクリスマスプレゼントは配られていることでしょう。
私は何ももらってないですが。。。
悪いことした覚えはないんですけどねぇ。。。
美月さん、入れ替えられたことに気づかず済んだみたいですね。
こういう展開なら割と平和的かな?と。
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