夕暮れ時、男子高校生の翔太はいつものように塾へ向かっていた。
道端でうろうろと何かを探している中年の女性が目に入る。
ふと気になり声をかけた。
「何かお探しですか?」
女性は少し驚いた表情を見せたが、すぐに笑みを浮かべ、「あら、親切ね。鍵を落としてしまったのよ」と答えた。
翔太は一緒に鍵を探すことにした。少し歩いた先で、ついにその鍵が見つかった。
差し出すと、女性は心から感謝の意を示し、「本当にありがとう。お礼にお茶でも飲んでいって」と言って、彼を家に招いた。
その女性、佐々木陽子はおだやかで、どこか母性的な雰囲気を漂わせていた。
少し遠慮しながらも、翔太は好奇心に勝てず、招かれるまま彼女の家に入った。
家の中は静かで、どこか懐かしい香りが漂っていた。
陽子がキッチンでお茶を淹れている間、翔太は部屋を見渡し、少し落ち着かない様子だった。
やがてテーブルにお茶が出され、二人は軽い世間話を始めた。話題が途切れた頃、陽子がふと口を開いた。
「そういえば、お礼がしたいって言ったけど、何か欲しいものはある?」
翔太は、少し照れくさそうにしながらも、お礼の話題をどう返そうか考えた。
思春期の好奇心も手伝って、ふと心の中に浮かんだ言葉がそのまま口から出てしまった。
「おばさんのこと、もっと知りたいです。」
その言葉に陽子は一瞬驚いたが、すぐに微笑んだ。「そう…じゃあ、ちょっと待っててね。」と言って、奥の部屋に消えた。
戻ってきた陽子は手にアロマキャンドルを持っていた。
「これね、リラックスできる香りだから、一緒に楽しみましょう。」そう言って、キャンドルに火を灯すと、甘い香りが部屋中に広がった。
翔太は最初、その香りに少し戸惑ったが、次第に心地よい気分になっていくのを感じた。
しかし、そのリラックス感は急速に眠気へと変わり、意識がぼんやりと遠のいていった。
そして、気が付くと、目の前に見慣れない鏡に映る自分の姿が――いや、それは自分ではなく、陽子の姿だった。
「えっ、何だこれ!?」
パニックになった翔太が声を上げると、その声は明らかに陽子のものだった。
驚きと混乱が交錯する中、後ろから自分――つまり翔太の姿をした陽子が現れた。
「驚いた?これ、アロマキャンドルの効果なのよ。」陽子は淡々と説明した。「でも、残念ながらしばらくこのままよ。キャンドルの効果が切れるまでは戻れないの。」
翔太は必死に抗議した。「いや、そういうことじゃない!お礼ってそういう意味じゃなかったんです!」
しかし陽子は微笑みを浮かべたままだ。「大丈夫。少しの間だから。それに、私の生活を少し体験してみるのも悪くないでしょ?」
翔太は深いため息をついた。
まさか、こんな形で自分が女性の体を体験することになるとは思わなかった。
彼の心の中は混乱と困惑でいっぱいだったが、陽子の落ち着いた態度に、どうすることもできない現実を感じ始めた。
「しばらくはその体で過ごしてみて。日常の違いを感じながら、私の気持ちも少し分かるかもしれないわ。」陽子の言葉は、どこか含みを持たせながらも優しさが感じられた。
翔太は仕方なく、その提案を受け入れるしかなかった。
翔太は突然の出来事に大いに戸惑い、陽子の姿になった自分をじっと見つめた。
目の前の鏡に映るのは見慣れない女性の体。
美しい顔立ち、柔らかそうな髪、そして丸みを帯びた身体――これが自分だなんて、とても信じられない。
「これ、本当に僕なのか…?」
自分の声も高くなり、さらに混乱する翔太。
手を顔に当ててみたり、髪を触ってみたりするが、その感覚は確かに自分のものだ。
しかし、その戸惑う姿を見ていた陽子は、微笑みながら一歩近づいてきた。
「大丈夫よ、少しずつ慣れていけばいいわ。せっかくだから、もっと自分を知ってもらいましょう。」
陽子は優しい声でそう言うと、突然、翔太の腕を取り、自分の体を触るよう促してきた。
驚いた翔太は、一瞬ためらったものの、彼女の真剣な表情に従わざるを得なかった。
彼女の温かい手に導かれるまま、翔太はおそるおそる自分の――いや、陽子の体に触れた。
「…こんなに柔らかいんだ…」
手のひらに伝わる柔らかい感触に、翔太は戸惑いながらもどこか不思議な気持ちになった。
陽子の体を触ることで、徐々に自分が本当に女性の体に入ってしまったことを実感し始める。
陽子も彼の反応を見ながら、さらに彼の背中や肩に手を回し、距離を縮めてきた。
「もっとリラックスして。こうやって触れることで、お互いのことが分かるのよ。」
陽子の優しい声と共に、彼女はさらに自分の体を翔太に委ねていく。
次第に翔太は、身体が熱くなるのを感じ始めた。
頬が赤くなり、胸の鼓動が早まっていくのを抑えきれない。
陽子はその様子を感じ取り、さらに積極的に彼の体に触れてきた。
「ねえ、もっと自分を知ってもらうために、もう少し調べてみたら?」
陽子の言葉に、翔太は一瞬ためらった。
しかし、彼女が穏やかに微笑んで頷くのを見ると、何かが吹っ切れたような気がした。
彼は覚悟を決め、鏡の前で今の体をくまなく調べることにした。
胸に手を伸ばし、その感触を確かめたり、細く柔らかい手足を触れたり、女性特有の丸みを帯びたラインに指を滑らせていった。
「これが…今の僕なんだ…」
翔太はまるで別の存在になったかのような不思議な感覚に包まれながらも、少しずつその現実を受け入れていく。
陽子もそんな彼を見守りながら、温かく微笑んでいた。
その夜、二人はソファに座りながら、自然に抱きしめ合った。
互いの温もりを感じながら、徐々に意識が遠のいていく。
体が女になってしまったためか、なぜか抱かれることで心は安心感に包まれていた。
「不思議だね…こうやって抱きしめ合うだけで、なんだか安心する…」
「そうね。人は、触れ合うことで本当の自分を知ることができるのかもしれないわ。」
そう囁きながら、二人はそのまま眠りに落ちていった。
翌朝、翔太は静かな部屋の中で目を覚ました。
まだ少しぼんやりとした頭で、昨夜の出来事を思い出し、隣にいるはずの陽子を見ようとした。
だが、目をこすりながら周囲を見渡しても、彼女の姿はなかった。
「おばさん…?どこに…?」
翔太は立ち上がり、部屋を歩き回って探してみたが、陽子の姿は見当たらなかった。
焦る気持ちが募る中、鏡の前に立って自分の姿を確認すると、まだ陽子の体のままだった。
「まだ元に戻ってないのか…?」
さらに驚くことに、自分の本来の体――翔太の体がどこにも見当たらなかった。
家の中を隈なく探してみたものの、彼の体は跡形もなく消えてしまっていたのだ。
「…いったい、どういうこと…?」
翔太は驚愕し、これからどうするべきか全く分からないまま、その場に立ち尽くした。
陽子の体の中で、このまま生きていくしかないのか――その不安が胸に押し寄せてくる中、彼は一人、途方に暮れていた。
最近は冒頭から何となく結末が読めそうな展開だったので
たまには思いっきりひっくり返そうと思いました。
一時的だと思ってたら非日常な体験も楽しめそうですが
望まない永久な変化だと絶望するかもしれませんね。。。
その後は想像にお任せします。
もしかしたら、ちょっと買い物に行っててすぐに帰ってくるのかも?
もしかしたら、元々若い体が目当てで、もう戻って来ないのかも?
あなたならどちらの運命を辿りたいですか?
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