
「……好きだ。」
その一言を、言ったはずだった。
放課後の教室。窓から差し込む夕日が、教室の床に細長い影を落としている。
俺、春樹は目の前に立つ彼女を見つめていた。
彼女の名前は美咲。
クラスの人気者で、誰にでも優しくて、でもどこか気を許してくれている気がして――ずっと好きだった。
美咲は驚いた顔で俺を見つめている。
薄紅色の唇が少し開きかけて、言葉にならない言葉を紡ごうとしている。
心臓が痛いほど早くなる。やっと言えたんだ。でも――
「……え?」
突然、ふわっと意識が遠のいた。
「……ん? えっ?」
次に目を覚ました時、目の前に映ったのは――俺自身だった。
「は? な、なんで俺が俺を見てるんだ?」
「春樹……? ちょっと待って、えっ?」
俺の声が耳に響いた。自分が喋ってる……?
でも、その声は明らかに俺のものじゃない。
焦って目の前の鏡に駆け寄ると――
そこには美咲の顔があった。
「はぁぁぁ!?!?!?」
「ちょ、落ち着いて……!」
俺は慌てて胸元に手をやる。
やわらかい感触。スカートのひらりとした軽い感覚。
足元を見ると、黒いローファーと膝上まで伸びたソックス。そして――
「お、お、おいおいおい!? なんで美咲になってるんだよ!!」
「そ、それはこっちのセリフだって!」
声をかけてきたのは――俺の身体に入った美咲だった。
俺は床にへたり込む。
心臓がバクバクしてる。
この状況、理解が追いつかない。
「待って、なんで俺、美咲になって……」
「私だってわかんないよ……」
「と、とりあえず家に帰ろう。何か原因がわかるかもしれないし」
「そ、そうだね……」
俺は仕方なく、美咲の身体のまま彼女の家に向かうことになった。
スカートが風でひらっと舞う感覚に慣れず、ドキドキしながら家に着く。
「ただいまー」
「おかえり、美咲。あら、一緒なのね」
出迎えてくれたのは美咲の母親だった。
俺(美咲)は思わず背筋を伸ばす。
「え、えっと……うん」
「美咲、ちゃんと宿題やるのよ?」
「う、うん……」
慣れない敬語で返してしまう。
美咲の母親は不思議そうな顔をしていたが、特に突っ込まれることなく去っていった。
「ちょ、どうすんのこれ!? 俺、美咲のままお風呂入るの!?」
「そ、そこはどうにかして……!?」
このままどうなるんだ――!?
翌朝、学校での生活がスタートした。
「おはよう、美咲!」
「え、えっと……おはよう?」
「どうしたの、テンション低いね?」
美咲の友達に声をかけられるが、どう返していいかわからない。
美咲の仕草や言動を真似しながらどうにか乗り切るが、体育の時間になると大ピンチ。
「え、私(春樹)が……着替え……?」
「何言ってるの、早くしないと怒られるよ!」
「え、でも……」
「どうしたの、美咲?」
「い、いや、何でもない……!」
結局、別室に逃げ込んでどうにか危機を回避した。
一方の美咲(春樹)は――
「えー、春樹ってそんなに運動できたっけ?」
「いや、まあ……」(実は美咲がやってるからだとは言えないな)
意外とすんなり馴染んでいた。
「これ、どうやったら元に戻るんだろうな……」
「うーん……」
放課後、2人で話し合っていると、美咲がふとポケットから小さなチョコを取り出した。
「これ……?」
「あ、それ……昨日、買ったやつ……」
「食べたら……戻るとか?」
「やってみる?」
俺はうなずき、二人でそのチョコを半分に割って口に入れる。
「……ん」
「どう? ……あれ……?」
ふっと視界が歪み、次の瞬間――
「……あ、戻ってる!!」
「よかったぁ……!」
お互いの身体を確認し合い、安堵して笑い合った。
その後、俺たちはなぜかときどき入れ替わるようになった。
特に感情が高ぶったり、体調が悪かったりすると、突然入れ替わることがある。
「ねぇ、春樹……もしかして、これって……」
「……俺たち、繋がってるってこと?」
美咲は嬉しそうに微笑んだ。
「なら、これからもよろしくね」
「……あぁ。お前が困った時は俺が助けるし、俺が困った時は――」
「私が助けるよ」
そう言って、美咲は俺の手をそっと握った。
心臓がまたバクバクと音を立てる。でも今度は――その音が心地よく感じた。
後半は電子書籍にて

いつでも入れ替われるような関係の相手が欲しい。
そして男女それぞれの遊びを満喫したい。
まあ、出来たとしてもそんなに都合の良いことにはならないでしょうが。
イラストの服がよく分からないデザインになってますね。
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