タケルには、誰にも言えない小さな秘密があった。
女の子の制服を着てみたい――という願望だった。
幼い頃からその気持ちはあったが、年を重ねるにつれてその願望が強くなっていく一方、恥ずかしさも増して、誰にも相談できないままでいた。
だが、唯一の理解者がいるとすれば、それは幼馴染のマイカだった。
明るく自由な性格のマイカなら、自分のことを馬鹿にせずに聞いてくれるかもしれない。
そんな淡い期待と共に、タケルはある日、思い切ってマイカに打ち明けてみることにした。
「なあ、マイカ…ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ…」
放課後、二人で帰り道を歩きながら、タケルは勇気を出して話しかけた。
少し顔を赤らめながら、彼の言葉を聞いていたマイカは不思議そうに首をかしげた。
「何? タケルがそんな顔して相談って珍しいね。どうしたの?」
「いや、その…もし変だって思ったらごめん。でも、マイカの制服を…一度着てみたいんだ。」
タケルの言葉に一瞬の沈黙が流れる。
しかし、すぐにマイカの目が輝き出し、彼女はにやりと笑った。
「へぇ~、タケルが女装に興味あったなんて。ちょっと意外かも。でも…面白いじゃん!いいよ、貸してあげる!」
タケルは思わず顔を赤らめたが、マイカの快諾に内心ホッとした。
そして、次の日曜日にマイカの家で制服を貸してもらう約束を取り付けることができた。
約束の日、タケルはマイカの家にやって来た。
心臓が高鳴り、緊張で手汗が止まらない。
それでも、彼は自分の夢を実現するために勇気を振り絞ってドアをノックした。
「いらっしゃい、タケル!準備万端だよ!」
マイカは元気よく出迎え、さっそく自分の制服をタケルに渡した。
ブレザーの制服にスカート、それにブラウス。
彼女はウィッグや化粧品まで用意していて、彼が本当に「女の子」として見えるように一生懸命準備をしてくれていた。
「えっと…マイカ、本当にここまでしてくれるの?」
タケルは驚きと感謝の気持ちでいっぱいだったが、それ以上に緊張もしていた。
そんな彼にマイカは軽く笑って応えた。
「もちろん!タケルがここまで言ってくれるなんて嬉しいもん。それに、私も女装男子好きだからさ、タケルがどんな風になるのか楽しみで仕方ないんだ!」
「そ、そうなんだ…」
タケルは少し戸惑いつつも、彼女の協力に感謝しながら制服に袖を通した。
ブレザーの感触やスカートの軽やかさが新鮮で、心が高揚していく。
「わぁ、意外と似合ってる!でも、まだまだだね。メイクもして、もっと可愛くしてあげる!」
そう言ってマイカはタケルを椅子に座らせ、化粧を始めた。
彼女は手慣れた様子でアイシャドウやリップを塗り、チークで顔に血色を足していく。
タケルは初めての化粧に少しむずがゆさを感じつつも、鏡に映る自分が変わっていく様子に驚きを覚えていた。
「見て、タケル。これが『女の子』になった君だよ。」
鏡に映るタケルは、まるで別人のように可愛らしく変身していた。
彼は思わず自分の顔に手を当て、信じられないというように目を見開いた。
「これ…本当に俺なのか…?」
「そうだよ!タケル、すごく可愛い!やっぱり女装してよかったでしょ?」
タケルは少し恥ずかしそうにしながらも、マイカの言葉に頷いた。
この瞬間、彼の胸にある抑えきれない喜びが広がっていった。
しばらく二人で家の中で楽しんでいたが、ふとマイカはニヤリと笑みを浮かべた。
そして、自分がタケルの制服を手に取り、さっと着替え始めた。
「ん?マイカ、何してるんだ?」
「私もタケルの制服を着てみたかったんだよね。それに、せっかくお互いの服を着たんだし、このまま外に出てみない?」
タケルは驚きのあまり言葉を失ったが、マイカの提案に心が揺れ動いた。
外に出るのはリスクもあるが、一方で、心の奥底では少しだけ興味も湧いていた。
「で、でも…街に出るなんて、誰かに見られたらどうするんだよ?」
「大丈夫だって。メイクしてるし、ウィッグもあるし、タケルはバレないって。むしろ、新しい自分を楽しむチャンスだよ!」
マイカはタケルの手を引き、そのまま玄関へと向かった。
タケルは戸惑いながらも、彼女の強引な引っ張りに逆らえず、ついに玄関のドアを開けることに。
「…分かったよ、マイカがそこまで言うなら…」
タケルは腹を括り、マイカと一緒に家を出ることにした。
二人は街の中心地に向かい、商店街やカフェを巡ることにした。
タケルは女装した自分が周りの人からどう見られているのか不安だったが、意外と誰も気にしていないようで、少しずつ緊張がほぐれていった。
「ねえ、タケル。せっかくだからプリクラ撮ろうよ!」
「プリクラ!?いや、そんなことしたら余計に目立つだろ!」
「大丈夫、プリクラの中なら誰も見てないし、それに写真に残しておきたいじゃん!」
マイカの強引な提案に押され、タケルは仕方なくプリクラに挑戦することになった。
機械の中で二人並んでポーズを決めると、画面には可愛らしい二人の姿が映し出された。
「ほら、可愛いでしょ?タケルもいい感じ!」
「…た、確かに。こうやって見たら、なんか普通に女の子に見えるな…」
タケルは照れ臭さと少しの誇らしさが入り混じった表情で、画面に映る自分を見つめていた。
その後、二人はカフェでお茶をしながら、普段とは違う視点で周りの人々を観察したり、洋服店で女物の服を試着してみたりと、一日中街をふらついた。
日が暮れてきた頃、二人はようやく家に戻ることにした。
家の玄関で制服を交換し、お互いに元の姿に戻ったが、その日は二人にとって忘れられない特別な日となった。
「今日はありがとな、マイカ。なんか、自分の中にこんな一面があるなんて、思ってもみなかったよ。」
タケルは少し照れ臭そうに、だが感謝の気持ちを込めてマイカに言葉をかけた。
普段の自分では感じられない感覚や、女の子としての振る舞いを経験することで、自分が知らなかった一面に触れられた気がしたのだ。
マイカは満足げに微笑んだ。
「うん、私も楽しかったよ!タケルがこんなに可愛いって知って、ちょっと得した気分。これからもいつでも女装したいって思ったら、声かけてよね!」
「はは、そんなに簡単に頼めるかな…まあ、今日のことは二人だけの秘密ってことで。」
「もちろんだよ!私たちだけの秘密。誰にも言わないって約束する!」
マイカは笑いながら、親指を立ててウインクした。
その仕草が、タケルにはまるで自分を肯定してくれているように感じられ、心が温かくなった。
自分のことを理解し、受け入れてくれる存在がいることの安心感が、タケルにとっては何よりも大きかった。
その後、タケルとマイカは時々、こっそりと「女装ごっこ」を楽しむようになった。
もちろん学校では普通の友達として接しているが、放課後や休日になると、タケルはマイカの家で制服や他の洋服を借りて女装をすることが増えていった。
「タケル、今日はこのワンピースとかどう?いつもと雰囲気変わって、絶対可愛いと思う!」
マイカは楽しそうに自分のクローゼットを漁りながら、タケルに似合いそうな服を次々と手に取って見せた。
タケルは最初こそ恥ずかしがっていたが、最近では少しずつ自分からも提案をするようになっていた。
「うーん、ワンピースもいいけど、今日はちょっとクールな感じで決めてみたいな。こう、シックな感じっていうか…」
「おお、タケルがファッションについて語るようになるなんて成長したね!じゃあ、これなんかどう?」
マイカが取り出したのは、シンプルで上品なデザインのブラックのドレスだった。
彼女はタケルにそれを渡し、着替えを待ちながら楽しそうに微笑んでいた。
「うわ、本当に似合ってるじゃん!タケル、いつか女装して街に出てもバレないんじゃない?」
タケルは少し恥ずかしそうに微笑み返しながら、鏡の中の自分を見つめた。
確かに、以前とは違い、女装が自分にとって自然になってきているのを感じていた。
ある日、マイカはタケルに新たな提案をした。
「ねえ、タケル。今度は私と一緒にイベントに行かない?街の方で女装やコスプレが集まるパーティがあるんだけど、きっと楽しめるよ!」
「えっ、イベント!?それって…他の人の前で女装するってことだよね?」
タケルは驚きと不安で心がいっぱいになったが、一方で、未知の世界への好奇心が少しだけ芽生えた。
マイカとなら、もしかしたら勇気を出して踏み出せるかもしれない。
そう思いながらも、タケルは少しの躊躇いと共に返事をした。
「…うん、マイカと一緒なら、行ってみてもいいかも。」
マイカはその言葉を聞いて、嬉しそうに拍手をした。
「やったー!じゃあ、一緒にコーディネート考えよう!タケルが最高に可愛く見えるようにしてあげる!」
二人はその日のために準備を進め、タケルは徐々に自分の殻を破り始める。
そして、イベント当日、二人は互いの力を借りて堂々と街に繰り出した。
タケルの心には、不安と同時に新しい自分を見つけるための小さな勇気が芽生えていた。
イベントが終わり、帰り道、タケルは自分の中に確かな変化を感じていた。
女装を通じて、新しい自分に出会えたことで、自己表現の自由と楽しさを知ったのだ。
「マイカ、本当にありがとう。君がいなかったら、俺、こんな風に自分を認められなかったと思う。」
タケルは心からの感謝を込めて、マイカにお礼を伝えた。
マイカは照れくさそうに笑いながら、タケルの肩に手を置いた。
「タケルはタケルのままでいいんだよ。これからも、私と一緒に色んなことを楽しもうね。」
タケルはその言葉に頷き、二人だけの秘密の絆を感じながら、これからも新しい自分と向き合っていくことを心に誓った。
女装趣味なんてあると、女装男子好きの女性と会えたら大当たりですね♪
そんなの中々いないと思いますが。
女装サロンのスタッフさんなんかは、女装した男を見たくてやってる人もいるかも?
単純にお金のためかもしれませんが。。。
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