病室の窓からぼんやりと外を眺める拓也は、いつもと変わらない退屈な一日を過ごしていた。
手術後の回復待ちで入院しているが、体調は良くなってきているのに、外出もままならず、日々の単調さにうんざりしていた。
テレビも雑誌も飽きてしまい、唯一の楽しみは、看護師の由美がやってくる時間だけだった。
「あ、拓也さん、今日も元気そうですね」と明るく声をかける由美。
彼女は親しみやすい雰囲気を持った若い看護師で、病室に入るたびに笑顔で声をかけてくれる。
拓也もつい、くだらない冗談を交えて会話を楽しむようになっていた。
「元気なのはいいんだけどさぁ、ここから出られないのが辛いんだよねぇ。由美さん、俺もあんたみたいに病院内を自由に動き回りたいよ」
拓也は冗談交じりに言ってみるが、由美はクスッと笑って「そうですね、自由に動けるのはいいことですけど、看護師の仕事もそんなに楽じゃないんですよ」と返した。
その一言に、拓也は一瞬真剣な顔をして、ふと考えたように言う。
「だったら、さぁ…俺と身体交換してくれない?そうすれば、俺も少しはこの病院の外に出た気分になれるかもしれないし」
由美は驚いたように目を丸くして、笑いをこらえた。「そんなことできるわけないじゃないですか。もしできたとしても、大変ですよ、患者さんがナースのフリをしていたら」
しかし、その瞬間、不思議なことが起きた。
突如として、部屋中がまばゆい光に包まれ、目が眩んだ。
拓也は一瞬、意識が途切れたかのような感覚に襲われ、気がつくと、自分の体に違和感を覚えていた。
「…え?」
拓也が目を開けると、自分の視界には、白いナース服を着た身体が映っていた。
自分の腕が細く、女性のものになっているのを感じ、震えた手で自分の顔に触れる。
そこにあるのは、見慣れた自分の顔ではなく、由美の顔だった。
「うそだろ…?本当に入れ替わってる…!」
拓也は驚きつつも、次第に興奮が湧き上がってきた。
まさかこんなことが現実に起きるとは思ってもみなかったが、せっかく手に入れたこの機会、無駄にはできない。
彼はナース服を整え、意気揚々と病室を出る。
廊下を歩くと、他の看護師や患者たちが「由美さん」と声をかけてくる。
そのたびにぎこちなくも返事をしながら、病院内を自由に歩き回れる喜びに浸った。
患者や医師の目を気にしつつも、各階を行ったり来たりし、普段は見られない病院の裏側まで見て回った。
「おいおい、看護師って結構大変そうに見えるけど、こうやって自由に動けるってだけで、最高じゃん」と、拓也は一人ごちながら、病院内の様々な場所を探検していた。
しかし、そんな楽しい時間は長くは続かなかった。
突然、廊下の向こうから聞こえる叫び声と人々の慌ただしい足音が、病院全体を緊張感で包み込んだ。
遠くから看護師や医師が走ってきて、「事故が発生しました!」と叫んでいるのが聞こえる。
「事故…?」と戸惑いながらも、拓也は興味本位で声のする方へ向かおうとした。
しかし、急いで移動しようとした瞬間、彼の視界が急にぐらつき、足元がふらついた。
次第に意識が遠のき、そのままその場に倒れ込んでしまった。
気がつくと、拓也は冷たい床の上で目を覚ました。視界がぼやけ、全身に重い鈍痛が走っている。
ゆっくりと起き上がり、自分の手を見た瞬間、彼の心臓は凍りついた。
手の肌は青白く、まるで生気を失って腐敗しかけているかのようだった。
「な、なんだこれ…」
全身が痛み、立ち上がるのも一苦労だった。
ふらふらとした足取りで近くの鏡に映る自分の姿を確認すると、そこにはゾンビのように血走った目と、腐敗した肌を持つ自分の姿があった。
「俺が…ゾンビに…? なんでこんなことに…!」
拓也の心には、信じられない恐怖と絶望が広がっていった。
元の自分に戻れば、もしかしたらこの状態からも抜け出せるかもしれない。
そう考えた彼は、なんとか自分の元の身体を探し出そうと決意する。
「頼む、まだ俺の身体が無事でありますように…」と心の中で祈りつつ、拓也は重い足取りで病院内を歩き回り、必死に自分の身体を探した。
しかし、しばらく探し回った末、ついに自分の身体を見つけることができたが、それは思ってもみない光景だった。
自分の元の身体もまた、同じようにゾンビ化しており、虚ろな目でさまよっていたのだ。
彼の心はズタズタになり、その場で膝をついてしまった。
「俺の…俺の身体も…」
今や自分の身体は、自我を失い、ただ彷徨うだけの存在となっていた。
目の前の光景に、彼の心は完全に崩れ去った。
自分の身体が元に戻らないどころか、自分すら失われてしまったかのように感じた。
諦めきれない思いで、自分の元の身体に向かって「戻ってくれ! 俺に戻れ!」と叫ぶが、何の反応も返ってこない。
手を伸ばして触れようとした瞬間、彼の目の前で元の身体はふらりと倒れ、もう二度と動くことはなかった。
拓也はその場で崩れ落ち、震える声で呟いた。「こんなことになるなら、最初から入れ替わりなんて望まなければよかった…」
後悔と絶望に押しつぶされ、彼は全てを諦め、病院の隅で静かに目を閉じた。
話の中にベースなんて出てこないけど。
まあ、別にいいか。
ハロウィンなんで仮装した写真でホラー風にしてみました。
でもこういうことではない気がする。
子どもにはピカチュウの着ぐるみを着せました♪
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