「ふぅ……」アラサーの女性、彩香(あやか)は、一日の疲れを癒すように立ち呑み屋のカウンターに腰を落ち着けた。
仕事帰りのスーツ姿が少しだらしなくなっているのは、今日が特に忙しい一日だったからだ。
口にしたビールの冷たさが喉を潤し、心も少しほぐれてくる。
そんな時、隣に小柄で可愛らしい若い女性が座り、注文を始めた。
「こんばんは。」ふいに声をかけられ、彩香は驚いたように顔を上げた。
大きな瞳に柔らかい笑顔。
若さと愛らしさが溢れるその女性は、フリル付きのブラウスにドット柄のスカートという装いで、彩香とは対照的な雰囲気を醸し出していた。
「こんばんは。こんな所に若い子が来るなんて珍しいね。」
「そうですか? たまに一人で飲みたくなるんです。私、あんまりお酒強くないんですけど。」
くすくすと笑う彼女に、彩香は自然と心を許した。
名前を聞くと「紗月(さつき)」と名乗り、歳を尋ねるとにこっと笑いながら「秘密」と返してきた。
そんなやり取りに、自然と二人の距離は縮まっていく。
「もう少しゆっくり話しませんか? 近くのカラオケなら空いてますよ。」
紗月の誘いに、彩香は少しだけ迷ったものの頷いた。
若い子と話すのは久しぶりで、どこか心が弾むような感覚があったからだ。
カラオケボックスの個室に入ると、紗月は自然に彩香の隣に座った。
歌い始めるかと思えば、彼女は突然彩香の方に身を寄せた。
「実は……面白いことができるんです。」
その囁きに、彩香は思わず顔を近づけた。「何?」
「入れ替わること、です。」
意味を理解するのに数秒を要したが、紗月の真剣な瞳を見て冗談ではないと悟った。
「どういうこと?」
「私たち、少しだけお互いの体を交換してみませんか?」
いたずらっぽく微笑む紗月。
しかし、その瞳にはどこか惹きつけられる不思議な力があった。
好奇心が勝った彩香は、軽い気持ちで頷いた。
紗月は彩香の手をそっと握り、目を閉じた。
そして――視界が一瞬真っ白になったかと思うと、次の瞬間、彩香の体に違和感が走った。
フリル付きのブラウスとスカート、華奢な体つき。
鏡に映る自分の姿を見て、思わず頬を触る。
だが、その感動も束の間、何か奇妙な感覚に気づいた。
「わ、私……本当に紗月ちゃんになってる……!」
そう声を出してみた瞬間、室内に響いたのは低く響く男性の声だった。
「えっ……?」
驚きで彩香は自分の喉を押さえたが、何度試しても聞こえるのは男性の声。
その違和感に困惑する彩香を見て、紗月――いや、本当の彼は、口元を押さえて笑い出した。
「ごめんなさい、声だけは変えられないんですよね。」
紗月は元々の彩香の体を使いながら、爽やかで明るい声を響かせた。
「ずるい! 紗月ちゃん(の姿の彼)はそんなに可愛い声なのに!」
彩香が抗議すると、その低い声が余計にギャップを強調し、彼はさらに笑い出した。
「仕方ないじゃないですか。それに、声も含めて“演じる”のが楽しいんです。」
紗月は少し得意げに言った。
紗月――彩香の体に入った彼は、まず目の前に映る鏡をじっと見つめていた。
背筋を伸ばして、彩香の大人っぽい顔立ちを確認する。
そして、興奮を抑えきれない表情でその手をゆっくりと頬に添えた。
「うわぁ……すごい、本物の女性の肌だ……」
鏡に映るのは、どこか疲れた印象を漂わせるスーツ姿のアラサー女性。
普段は可愛らしい女装をしている紗月にとって、この落ち着いた雰囲気の大人の女性は新鮮だった。
「ちょっと目元が重い感じ……これが疲れ目ってやつなのかな。」
そう呟きながら、彩香の体のまぶたを指で押してみる。
軽い違和感と共に、その重みが妙にリアルで心地よく感じられた。
「この視界の広さも、目元のくすみも、何もかもがリアル……」
声も彩香そのもので、ふと低めのトーンで喋った瞬間、自分がどれほど違う存在になったのかを改めて実感した。
「少し肩が凝ってるけど、この柔らかさは本物の女性ならではだよね……」
彼は彩香の体で肩を回し、スーツの上から自分の肩や腕を揉んでみる。
その動作ひとつひとつが新鮮で、つい顔がほころんでしまう。
「あ、これも……!」
彼は彩香のスカートポケットから小さな化粧ポーチを見つけ出すと、それを開けてリップクリームを取り出した。
「女性ってこういうの持ち歩いてるんだよね。塗ってみようっと。」
唇にリップクリームを滑らせると、少しヒリヒリする感覚に目を丸くした。
「これが“乾燥した唇”か。今まで男の自分じゃ気にしなかったけど、妙に気になるなぁ。」
そんな自分の言葉に小さく笑い、鏡に向かって口をパッと開いてみせる。
大人の色気を醸し出すその姿に、自分でも少し見とれてしまった。
しかし、少し時間が経つと、彼は彩香の体に隠れていた「疲労感」に気づき始めた。
「ん……なんだろう、妙に腰が重い。これはデスクワークの疲れかな。」
紗月は少し背筋を伸ばしながら、その違和感を感じ取った。
「これが“働く女性”のリアルってやつか……」
でも、その疲労感ですら新鮮で、どこか愛おしく感じる自分がいた。
そして、ふと彩香の手を見つめ、そっと指先を曲げたり伸ばしたりした。
指の間にかすかに残る乾燥や小さなシワ――それらすべてが、紗月には「大人の魅力」として映っていた。
「彩香さんの体、本当に素敵だよ。ちょっと疲れてるけど、それがまたいい味を出してる。」
彼は心の中でそう呟きながら、自分がこの新しい体験をとても楽しんでいることに気づいていた。
その後、彩香は紗月の姿でカラオケのマイクを持たされることになった。
紗月――本当の彼は、彼女の姿を完全に演じ切っており、歌声も女性そのもの。
対照的に彩香は、紗月の見た目で低い男性の声しか出せず、マイクに声を乗せるたびに、自分でも恥ずかしくて仕方がなかった。
「ど、どうやってそんな可愛い声出してるの?」
彩香は悔しそうに尋ねる。
「これは練習の賜物ですよ。長い時間かけて習得したんですから。」
紗月は得意げに笑う。
「えー、ずるい! じゃあ私がこの声で喋ると、ただの変な人じゃん!」
彩香は頬を膨らませ、仕草だけでも可愛らしさを表現しようとする。
しかし、それが低い男性の声と合わさると、どこかコメディタッチになり、紗月は笑いを堪えるのに必死だった。
そんなやり取りをしながら、彩香はますます自分が演じきれないことに焦りを感じていた。
一方で紗月――本当の彼は、自分の体で自然に女性らしさを振る舞い、彩香をリードするような態度を見せていた。
「でも、彩香さんのその声も、案外魅力的ですよ。」
「えっ?」意外な一言に、彩香は一瞬言葉を失った。
「例えば、“逆に”その声と見た目のギャップが、可愛らしさを引き立てているんです。」
彼の言葉に、彩香は困惑しながらも、少しだけそのギャップを受け入れる気持ちが芽生えていた。
紗月の提案により、二人は元に戻ることを決めた。
彩香は紗月の体の軽さや可愛らしさを惜しみながらも、やはりこの声で過ごすのは厳しいと思い、元に戻ることを受け入れた。
「今日は本当に不思議な体験だったわ。」
元の体に戻った彩香は、少しだけ名残惜しそうに呟いた。
「僕も楽しかったです。彩香さんみたいな人とこんな体験ができて、幸せです。」
彼のその一言に、彩香の心はどこか暖かくなった。
見た目が女の子に見えるなら、女性も男になる違和感を減らせますかね?
SNSで写真を挙げる人は女性物の下着を付けているのを強調してますが
割と女装者はみんな女性物の下着付けてると思います。
このワンピースも丈が短いので、トランクスとかだとスカートの下からはみ出して見えるんです。
あと、声は手術しちゃうと元に戻せないので、声の出し方を練習するみたいです。
なので、それが出来ない人が見た目だけ変えてしまうと、声は男のままですね。
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