「和真、どうして私ばっかり家事をやらなきゃいけないの?家のこと何もしないで、仕事ばっかりなんて不公平じゃない!」
紗月は腕組みをしながら夫の和真を睨みつけた。
和真はテーブルの上に散らばる書類を片付けようともせず、苦笑いを浮かべるだけだった。
「紗月、俺が仕事をしてるおかげで君は好きに暮らせてるんだろ?お互い分業してると思えばいいじゃないか。」
「分業?それなら和真がやってる仕事の分、私もやらせてみてよ!それでフェアだと思えるなら納得するから!」
和真は面白そうに目を細めた。
「分かったよ。じゃあ、ちょっと面白い提案をしてみよう。もしお互いの体を交換できたら、俺の仕事をやってみるかい?」
「交換?」
紗月は半信半疑だったが、和真の得意げな顔を見ていると、挑戦してみたくなる気持ちが沸き上がった。
次の日、目を覚ました紗月は何かが違うことに気づいた。
布団から出ると、いつもより体が重く感じ、鏡を見て驚愕する。
「これ……和真の顔!?」
同じ頃、和真も目を覚まし、自分の手足が細く華奢になっていることに気づいた。
鏡に映るのは、見慣れた妻・紗月の顔。
「本当に上手く行ったな。」
紗月は混乱しながらも、自分たちの提案が実現したことを理解した。
そして、互いに新しい生活を体験する一日が始まった。
紗月(和真の体)は和真のスーツを着込み、会社に向かった。
最初は周囲の視線が気になりつつも、男性として堂々と振る舞おうとしたが、職場でのやり取りが想像以上に厳しかった。
上司からの厳しい指示、同僚の無神経な態度、そして何よりも周囲からの期待が、彼女を重く押しつぶそうとする。
「和真、こんな環境で毎日働いてたの……?」
しかし紗月は簡単に諦めるつもりはなかった。
負けん気の強い性格が功を奏し、少しずつ職場での立ち振る舞いに慣れていった。
一方、和真(紗月の体)は主婦業に挑戦していた。
料理、掃除、洗濯……最初は戸惑ったものの、持ち前の器用さで次第に家事をこなせるようになった。
さらには、「和真」として仕事から帰宅した紗月を労うように振る舞い、軽い冗談で疲れた彼女を和ませた。
「今日もお疲れ様、紗月……じゃなくて、和真。よく頑張ったね。」
「なんでそんなに自然に褒められるのよ……でも、ちょっと嬉しい。」
和真は家事をこなすだけでなく、完全に「妻」としての役割を受け入れているようだった。
そして、次第に紗月を「夫」として扱い始める。
「ねぇ和真、ちょっとは頼りにしてもいいのよ?」と甘えるような言葉を紡ぐ和真に、紗月は戸惑いを覚えた。
数週間が経ち、紗月は仕事の大変さを実感しつつも、仕事帰りに和真が用意した温かい食事に癒されていた。
一方で、和真は家事だけでなく、紗月に心地よい日常を提供することに喜びを感じている様子だった。
ある晩、紗月は思い切って言った。
「和真、そろそろ体を戻さない?私たち、元に戻ったほうがいい気がする。」
しかし和真はにっこり微笑みながら答えた。
「そうかな?今のままでもいいんじゃないかな。あなたが仕事で輝いているのを見るの、すごく嬉しいよ。それに、私も今の生活に満足してる。」
その言葉を聞いて紗月は胸が詰まるような感覚を覚えた。
自分が「夫」として外で働き、和真が「妻」として家庭を守る姿に、どこか奇妙な心地よさを感じてしまっていたからだ。
紗月はその後も「夫」としての役割を果たし続け、和真も「妻」として完璧に振る舞い続けた。
二人の生活は、他人から見ればまるで理想的な夫婦そのものだったが、元の姿に戻れる兆しは一向に見えなかった。
やがて紗月は心の中でこうつぶやくようになった。
「このままでも……いいのかな?」
一方で和真も静かに笑みを浮かべる。
「これが私たちの新しい形ね。」
そして、二人の日常は何事もなかったかのように続いていく。
まるで、最初からこうであったかのように。
男女平等を唱えつつ、外で働く夫と家にいる妻
それ自体は特に否定しません。
家計を支える夫と、生活を支える妻の分業ですね。
ですが、過激な平等主義者が言ってるのは
夫は外で稼げ、家に帰ったら家事をやれ、ですからねぇ。
あなたは何をするのか?と聞いてみたい。
そういう人が増えてるから結婚できない人も増えてるみたいです。
男も昔ほど稼げないし、お荷物をかかえたくないと。
ちなみにうちは、稼ぎは違えど共働き、家事は分担です。
料理も掃除もその他諸々も交代でやってます。
ただし隙あらばお互いに押し付け合いますw
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