「陽向って、ほんっと可愛いもの好きだよねー!」
美咲がクラスの席で笑いながら言う。
「別にいいだろ。可愛いものが好きでも……」
陽向は苦々しく答える。
「いやいや、いいんだけどさ。でも、そんなの女の子っぽくない?」
「そんなの関係ないだろ!」
普段は受け流していたが、この日はなぜかムキになってしまった。
「おお、怒った怒った! 陽向ってやっぱり可愛いー!」
美咲のからかいに耐えられず、陽向は机を叩いた。
その瞬間、彼の体がふっと軽くなり、目の前が真っ白になった。
「えっ……」
目が覚めると、陽向は柔らかいシーツの上に横たわっていた。
そして、視界に映るのは、見覚えのない赤茶色の髪の毛。
「え? なにこれ?」
起き上がると、自分が美咲の体になっていることに気づく。
「ちょっ、なんで私が陽向になってるの!?」
驚いて声の方を向くと、そこには自分――いや、元の陽向の体をした美咲が呆然と立っていた。
「えええええ!? 俺、美咲になってる!? ってことは……!」
陽向は自分の手を見つめ、次にスカートをつまんでみた。
「やばい、スカート履いてる……っていうか、この身体、めっちゃ可愛い!」
「何喜んでんのよ! 戻る方法考えなきゃでしょ!」
美咲が怒るが、陽向は聞いていなかった。
「ってことは、思いっきりぬいぐるみを愛でてもいいってことだよな……?」
「は? 何言ってんの?」
美咲の言葉を無視して、陽向は部屋のベッドに飛び込んだ。
そして、そこにあった大きなぬいぐるみを抱きしめる。
「やばい……この手触り、最高すぎる……!」
「ちょっ、勝手に私のぬいぐるみ抱きしめないでよ!」
「いいじゃん、今俺は美咲なんだから!」
一方、美咲は陽向の体のまま鏡を見つめる。
「うわ、まじで男の顔……」
胸元を見ると、当然ながら何もない。
そして、スカートではなくズボンを履いている。
「いやいや、こんなの無理でしょ! 早く戻らなきゃ!」
美咲は焦るが、どうすれば元に戻れるのか全く分からない。
「もしかして、またケンカすれば戻る?」
試しに陽向のほうへ行き、またからかってみる。
「ねえ、陽向ってやっぱり可愛いもの好きだよねー!」
しかし、ぬいぐるみを抱きしめてうっとりしている陽向には全く響かない。
「もうどうでもいい! 俺、ぬいぐるみ愛でるのに忙しいから!」
「ちょっ、男子の自覚持ってよ!」
「いやいや、今は美咲の体なんだから女子でしょ?」
「なんかもう、頭痛くなってきた……」
戻る方法が分からないまま、二人は仕方なくお互いの生活を送ることにした。
陽向は美咲の家で女子として過ごす。
「スカートって涼しいな……それに、このタイツ、意外と暖かい……」
「そんな感想いらないから!」
美咲は陽向として男子の生活を送るが、問題が山積みだった。
「えっ、陽向ってこんなに効率悪いの!? 走るだけでこんなに疲れるなんて……!」
体育の時間、美咲はへとへとになってしまった。
「こんなの、無理……! 早く戻りたい……!」
ある日、二人は図書館で「入れ替わり」に関する本を調べていた。
「なんか、”入れ替わりの原因は強い感情のぶつかり合い”って書いてあるけど……」
「じゃあ、またケンカすればいいの?」
「いや、もしかしたら逆かも……」
「逆?」
「お互いの気持ちを認め合うことが大事なんじゃない?」
陽向は少し考えた。
そして、美咲の目をまっすぐ見て言う。
「俺、ずっと可愛いものが好きって言えなかった。でも、美咲になって、それを素直に楽しめたんだ」
「……それは、よかったんじゃない?」
「だから、美咲、からかってくれてありがとう」
美咲は驚いた顔をした。そして、ふっと笑う。
「じゃあ、私も言うね。男子の生活、大変だった……今まで男子が楽してると思ってたけど、そんなことなかった」
お互いの気持ちを理解し、二人は笑い合った。
すると――
「――あれ?」
気がつけば、二人は元の体に戻っていた。
次の日。
「陽向、ぬいぐるみ好きなの隠さなくていいんじゃない?」
「……まあ、そうかもな」
「じゃあ、今度ぬいぐるみカフェ行く?」
「えっ、いいの?」
「だって、友達でしょ?」
陽向は少し照れながら微笑んだ。
こうして、二人の関係は少しだけ変わったのだった。
男女関係なく好きなことやりたいですね。
一昔前なら男なのに女性の服を着るとか完全にヤバイ奴認定だし
何か犯罪者予備軍として見られてた気がする。
女性でゲームばっかりやってる人ってなかなか見なかったですし
いても結構ライト層で、なかなかコアな話ができる人がいなかった。
ちょっと前からだいぶおおらかになり、流れで結婚も出来たけど。
そこに関しては良い時代。暮らしの方は国が国民を追い詰めてますが。。。
しばらく質より量で毎日ガンガン駄文を上げていましたが
中身の見直しや整理をしたり、別のこともしたいので
ちょっと更新ペースは落とそうかと。
それでも2〜3/週くらいは作り続けたいけど。
という言い訳を残しておきます。
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